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香る一夜

二の腕の内側から脇腹に手と舌を滑らせた後、紫音をうつ伏せにすると項から肩甲骨、背骨に沿って尾てい骨にも手と舌を丁寧に這わせる。 「………いつも」 「ん?」 「いつも、こんなに丁寧に愛すんですか」 紫音が赤らむ顔を上げ肩越しに斎藤を振り返る。 「いや?」 言われてみればここまで丁寧に愛撫したことはなかったかもしれない、と斎藤は思った。 これきりかもしれないという思いもあったが、 それよりも思っていた以上に抵抗がない初めての男性に対する愛撫、 探りながらではあったが、紫音の反応がいいせいで女性相手にするよりも遥かに丁寧に丹念に動いている自分がいた。 尾てい骨に軽く歯を立てながら舌で舐め、そのまま臀部に降りて行くと、紫音の震える手が斎藤の腕を掴んだ。 「ずるい…」 拗ねたような紫音の声に斎藤が顔を上げる。 「私もあなたを気持ち良くしたい…」 そう言う紫音が恥ずかしがる処女から娼婦のように雰囲気が一変して見え、斎藤は思わず唾を飲み込んだ。

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