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迷う二夜
微睡む意識の中で寝返りを打ち、軋む身体に目を開けた。
ベッドサイドのライトの灯りだけではなく部屋全体が明るいことで、もう陽が高いことを教えていた。
身体を起こそうとして、腹に絡む重い腕に気付く。
振り返ると幼い寝顔で眠る愛しい人。
少し伸びた髭に触れると斎藤が身じろぎをし、目を擦った。
「紫音…」
この人は自分を抱きしめたまま眠ったのか。
その事実に途端に顔が赤くなるのを感じ、起こしかけた身体を倒し毛布を頭まで被った。
毛布の中で斎藤の脚が紫音の脚に触れ絡められる。
腕が伸び身体ごと後ろに滑らされ、また斎藤の腕の中に戻される。
「おはよ」
「…おはようございます」
「声掠れてる。ごめん、昨夜鳴かせすぎた」
「…………っ」
「紫音」
「………」
「紫音」
名前を呼ばれるだけで胸が痛い。
好きだと悲鳴を上げているようで痛くて切ない。
いっそ逃げだしてしまいたいほどの想いに紫音は毛布を強く握りしめた。
「参った……離したくないんだけど、どうしたらいいかな」
「……え?」
思わず振り向いた紫音の頬に斎藤の唇がつけられる。
「やっとこっち向いてくれた」
ほっとしたように笑う斎藤にまた胸が締め付けられる。
「かなり無理させたから怒ってるかと思って」
それもそうだ。
2人は部屋がうす明るくなるまで抱き合っていた。
ずっと挿入していたわけではなく、ただ抱き締め、顔中にキスをされたかと思えば、
また奥深くまで侵入され、
終わればまた慈しむように慰めるように身体中を舐め撫でられ、
そうしながら斎藤は一時も紫音を離さなかった。
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