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5 愛を込めて

 ガラス張りの浴室、広いジャグジーの中で希望ははしゃいでいた。大きな窓の外は夜景が広がっていて、浴室は淡い光で照らされている。ライが花びらを落としてくれるのを、両手を広げて迎えた。  たっぷりを花びらを浮かべて、花びらが水面をスイスイ滑るのを眺めていたら、ライが呆れたように笑っていた。  花びらが濡れたライの身体に数枚張り付いていて、思わずじっと見つめる。 「……何見てんの?」  ライが気づいて、希望を引き寄せる。されるがままに唇を重ねて、深く絡み合う。  花びらはそれでも離れない。  仕方ない。だってこれは『俺の愛』だから。ライさんへの愛なんだから。    ***    ベッドの上にも花びらを散りばめる。ライが浴室から出てくるまで、希望はいそいそと準備をしていたが、完成前にライが来てしまった。 「あー! まだ見ちゃだめだよ」 「何これ」 「……ハート」  花びらをハートの形に並べていたのがバレてしまって、希望は照れ笑いを浮かべた。ライは呆れたように鼻で笑っている。  けれど、希望を抱き寄せると、ベッドに押し倒した。勢いよくベッドに落ちて、ライが覆い被さる。反動で花びらが舞い上がる。  自分の愛がライに降り注ぐのを眺めて、希望は知らないうちに笑みを溢していた。    思わずライにしがみついて、自ら唇を重ねる。  そのまま二人は絡み合い、シーツの海に沈んでいった。    ***   「あっ、ぅん……っ……はぁっ……」    深く求め、愛し合った後、ようやくライの楔から解放されて、希望は息をついた。  ライが離れている間に、火照る身体と乱れた呼吸を整えようと、ころり、と横になる。  そこでようやく、ハッと我に返った。    ……花束を渡したかっただけなのに、なんで当然のように事後に!?    いつの間に!? と希望は目をパチクリさせた。  気付けば、白いシーツにハートの形に整えていた花びらは見事に散らかっていた。そして同じように、希望の白い肌にも、ライの愛の証が散りばめられている。  なんか違うな、今日は俺が花束をビシッと渡してかっこよく……と希望がぼんやり考えていると、ベッドの一部がぐっと沈んだ。 「何考えてた?」 「え? えっとぉ……」  ライが希望の顔の横に手をついて、覆い被さっている。ふと、その身体に目をやると花びらが一枚張り付いていた。おもむろに手を伸ばして摘んで、じっと眺める。  しばらく眺めていたが、希望の興味が花びらにあることが面白くなかったのか、ライが奪い取ってしまう。代わりに希望の手を握ると、手の甲に口付けをした。  眼差しだけ希望に向けられて、希望はきゅぅんと胸がときめく。  希望がとろんと目も頭も蕩けたのをライは見逃さなかった。   「もう一回する?」 「す、するぅ♡」 「はっ」    ライが鼻で笑うのも、今の希望には気にならない。  チョコのような甘さはないけれど、花の香りで酔えている。    ライの逞しい身体に、赤い花びらが吸い寄せられ、纏う姿。  受け取ってもらえた自分の愛が、部屋中に散らばって、微かに香っていること。  そのことに満足して、希望はライの背に腕を回した。    自分の重く鬱陶しいはずの愛がそのまま受け入れられている。  希望にとって、それがこの上なく愛おしく、幸せなことだった。

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