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俺の好きなものは

「ねえ、由貴(ゆき)は結腸とアナルファスト、どれが好き?」 「帰る」 「待って待って帰んないでよ、ねえぇ」 今すぐ家に来てね、と連絡があって来たら開口一番これだ。 何考えてんだ。 殴らなかった俺は素晴らしい。 「ごめんよぉ、由貴が一番好きなのは拘束されたまま掘られることは知ってるうおぁあ!」 流れるように右ストレートを放ったが奇声を上げながらかわされる。 ちっと舌打ちする。 ヒョロヒョロで弱そうな見た目してるくせに避けるのだけは一丁前に上手い。 「んもー、僕に呼び出された時点で理由はわかってるんでしょ? すぐに手を出してくるし」 めっ、と軽くデコピンを喰らう。 俺がむすっととしたまま黙っているとため息をつき俺に寄りかかる。 「じゃーいいよ、ダンマリでも。 今日は結腸掘るから。 ほらおいで」 微笑みながら差し出された手を睨む。 俺は犬が”お手”をするように手を置く。 「うんうんいい子、初めて会った時とは大違いだね」 そもそもこいつとの付き合いは俺が売られた喧嘩を買っていた時に出会った。 俺はボクシングをしていたがあることが原因で辞めざるを得なくなった。 それは、痛みで感じてしまう体質。 もっともっと、痛みを、快感を。 もっと殴ってくれ、と俺も相手を殴り返していたが悲しいことに俺は強すぎた。 相手を殴りすぎて、ただの練習だったと言うのに相手を病院送りにしてしまった。 そんな危ない奴の面倒は見れない、と追い出されてしまった。 なんでだよ。俺はただ楽しみたいだけなのに。 楽しいことをしたいだけなのに。 元々と目つきが悪いのもあって喧嘩をふっかけられやすかった。 だから売られるままに喧嘩を買った。 けれど満たされない。 あまりにも弱すぎるから。 「あわ〜。何これ喧嘩? え〜、君一人でやったの? うわーすごいなー」 ひょっこり現れたのがお前だった。 返り血を浴びている俺にもビビることなく普通に話しかけてきた、 見られたのは面倒だと思いすぐに殴りかかろうとした。 が、するりと避けられる。 「危ないじゃんか、やめてよ。 僕に八つ当たりしないで」 「八つ当たりじゃねえよ」 「君は喧嘩したいの? そんな感じには見えないんだけどな。 もしかして……痛くされたいタイプなのかな?」 「……そうだと言ったらどうなんだよ」 「えー! なら僕と付き合ってよ。もう喧嘩しないって約束してくれるなら君のしてほしいことたくさんしてあげるよ」 「……お前に利益何もないだろ」 「あるよ。代わりに僕が連絡したらすぐ返事すること。 そして僕のやることに反抗せずに全部受け入れること。 まあ、君にとって気持ちいいことで僕にとっても利益があることかな」 そう言って手を差し出される。 胡散臭かったが”気持ちいこと” その甘美な響きに差し出された手を叩く。 「う〜ん……いいってことでいいのかな? まあよろしくね」 ―――――――――――――――――― 「由貴、由貴〜? 起きてる?」 「……起きてる」 「ありゃ、それはよかった。拘束されただけで良すぎて飛んだのかと思ったじゃんか」 「……」 ぷい、と顔を逸らす。 奴がにやにや楽しそうにに笑っているのが腹たつ。 今日の拘束はやけに頑丈だ。 手は手袋をはめられ腕ごとベルトでまとめられ、その上から腹にピッタリくっつくようにベルトでまとめられている。 上下に動かすこともできない。 下も膝を立てたまま太もも、ふくらはぎが密着するようにガッツリベルトで締められている。 足を閉じるぐらいはできそうだがこの男が許さないだろう。 動きの全てを封じられ決して緩くないベルトの締め付けにすでに俺のものは半勃ちになっている。 男が俺のものをピン、とはじく。 ローションをかけ、俺の尻の中に指を挿れてくる。 軽くほぐすと尻の中に入っていた指が抜け、あいつのものが俺の尻にあてがわれる。 こじ開けるように中に入ってくる。 ブルっと体を震わせ、されるがままに受け入れる。 コツン、と俺の中の行き止まりに当たった音がする。 「ふっ……」 しっかり解されてない中に挿れられてじくじくと鈍い痛みが走るのがまた心地いい。 俺は体を完全に脱力させ、これからくるであろう痛みを受け入れる体制を整える。 「ここで、いつも、終わってたから。 今日は、ここも開くよ」 「は……?」 ここが一番奥だろ、と言おうとするがあいつがさらに押し込むように挿れてくる。 ヒュッ、と息が漏れる。 無理だ、と叫びたくても犬のようにはっはっと空気が漏れる音しか出ない。 押し込んでは開かないと思ったのかノックするように何度も打ち付ける。 その度に浅い気持ちいいところが擦れ、奥をつかれ続け気持ちいのか苦しいのかわからなくなっていく。 もう無理だ、やめろ、と声を上げようとした時に グポン と入ってはいけない場所に入った音がした。 「か、ヒュッ……ぁ」 息が漏れて痙攣が止まらない。 待ってくれ、と言いたくても意味のある音を出せない。 静止しようにも腕も足もきつく拘束されてできない。 ……もっと痛めつけてくれ、と中を締め付けることしかできない。 奴はそんな俺にお構いなく抜いたと思うとまたグポン、と挿れてくる。 グポグポと人の体から出てはいけないであろう音を鳴らしながら何度も何度も。 快感を逃す術のない俺は人形のように揺さぶられ喉から意味のない声をあげる。 「はっ、やば…… 由貴ずっと射精してるの気づいてる? ピュッピュッ出てるけどそんな気持ちいいんだ?」 「ぁ〜! そこ、もっろ、ひもひーから。ほってもっろ」 「はは、何言ってんのか全くわかんねぇなっと!」 一際強く突かれた瞬間体が弓形(ゆみなり)に反り返りそうになるが押さえつけられ、俺は駄々をこねるように首を振ることしかできない。 快感がずっと渦巻いていて頭がおかしくなりそうだ。 「あーほんっといい顔するな。 あんなに喧嘩強くて笑わない由貴がさ、とろとろな顔してガチガチに拘束されて掘られて喜んでる。 由貴は痛くされるっていうより、苦しくされたりするのが好きなんだろうね。 僕と相性ぴったりだしやっぱ拾ってよかったなぁ。 今度はさ、外出て首輪とリードもつけて散歩しようよ。 もちろん全裸でさ。 拘束してトイレに置きっぱなしにしたら由貴なら喜んでくれるかな? 由貴が喧嘩してた奴ら呼んでそいつらの公衆便所になるのはどうかな? きっと由貴は喜ぶだろうね」 奴が言っていることを何も理解できないまま俺は快感に溺れていく。

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