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第1話(1)
「…え?俺のことが好き?」
先ほどまで俺と一緒同じ通学路を通っていた明るい表情から一転、親友の顔が引きつる。
「いやゴメン無理だわ…」
冗談だろ?と戸惑いを隠しきれず苦笑いの親友は、今は冗談が通じないことを俺の表情を見て察したようで、刺すように言い放った。
「だって、男同士でキモいだろ?」
親友だったそいつはそのまま何事も無かったかのようにさっさと帰って行ってしまった。
俺は息が詰まるような感覚になり、泣きそうになるのを堪えながらそのまま立ち尽くした。学生時代の思い出に黒い歴史が刻まれた。
と、まあ、これがテンプレの如くあえなく散ったおれの初恋だった。
が、数年後。
そんな苦い思い出もなんのその。
「あっんっあぁっ♡」
あからさまな喘ぎ声が部屋中に響いている。
「イクイクイクッイッちゃうぅ…っ♡」
体格、顔共にまあまあ悪くない男に激しく腰を振られながら俺は絶頂する。
ふう、と一息付き、微笑みながら相手の方を見る
「どうでした?」
こんな感じで、苦い思い出もとっくに克服し、充実したセックスライフを過ごしていた。
相手の男は抱いたことに後ろめたさを感じながらも、満足そうな顔をしている。俺はこの隙を見逃さなかった。
「満足していただけたようですね!!新商品のこちらのローションは使って頂いて分かるように、滑りも大変良く!挿入も従来の商品よりもスムーズに行うことができます!!ちなみにですね…」
俺の会社が扱う商品であるローションを片手にマシンガントークを相手目掛けてブッ放していく。
「…ということでして、弊社としましては、是非御社の製品と合わせてユーザーにお使い頂き、両社の更なる売り上げ向上につながると考えております!ですので、是非ウチとお取引きを!!!!!」
相手は俺の巧みな話術で完全に動揺している。このように押しを強くしているのにも訳がある。
「そ、そうですね…」
元々この会社とは契約する気はなかったんだけどな…とこの男の顔から出ているのが分かる。
正直ショートウルフの黒髪にぱっちりとした大きな瞳、小柄で女性にも負けない中性的な見た目をした美しい俺を抱きたいだけだったんだろうが、俺はそんなタダで抱かせるほど安くはない。
この俺を抱いたならそれ相応の対価を頂戴しなければ。
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