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第一章 終わったと思ったら、始まった。

「おいしい……」  水流 秀実(つる ひでみ)は、ホットサンドを噛みしめた。  涙がにじみそうだ。  幾日かぶりの、まともな食事。  居心地の良い、明るいカフェ。  芳しい、コーヒーの香り。  ペコペコに減ったお腹に、少しずつ食べた。  噛みしめ、味わい、飲み込んだ。  ここで、コーヒーを一口。  オリジナルブレンドのそれは、深い苦味の上に軽やかな酸味が乗っていた。  後味も、くどくない。  幸せを味にしたら、こういう風になるんだろうか。  そんなことまで考えながら、秀実は午後のカフェにいた。  周囲には、十名ほどの客。  マスターとウエイターが、合わせて四人。  その様子を、うかがった。  皆、和やかに談笑している。  思いつめた顔をしているのは、秀実ただ一人。  ホットサンドを、食べてしまった。  コーヒーも、干してしまった。 (あとは、勇気だけだ!)  秀実が立ち上がりかけた時、誰かが突然彼の前に掛けてきた。

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