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第二十一章・8

「答えを、聞かせて欲しいな」 「結婚しましょう、士郎さん」  士郎は秀実からリングを受け取ると、それを彼の薬指に通した。 「とても似合うよ」 「ありがとうございます」  リングの光る薬指を、秀実は胸に当てた。  包み込むように、もう片方の手で大切に覆った。  士郎さん。  士郎さんの真心が、今ここにある。 「はい、ブレンドとホットサンドです」 「真田さん」 「幸せなお二人に、私からのおごりです」  ブレンドと、ホットサンド。  それから、忘れもしないこの窓際の席。 「僕が無銭飲食した時と、同じ舞台ですね」 「秀実には、体で払ってもらおう」  一生、その身も心も、私の傍にいて欲しい。  一生、僕は士郎さんの付き人ですよ。  季節は巡り、あの時のような春の日。  二人は、永遠を誓う。  優しい日の光も、温かな風も、二人を祝福していた。

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