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第二十一章・7
「それで、士郎さん。わざわざ真田さんのカフェに僕を呼んだのは、なぜですか?」
今夜秀実の収録があるスタジオと、KDプロダクションの事務所とは、ちょうど中間にある、真田の本店。
士郎はそこへ、久々に秀実を呼び出していた。
「秀実は成功を納め、私の会社も何とか持ってる。そこで、頃合いかと思ってね」
これを。
受け取って欲しい、と士郎は小箱を秀実に手渡した。
美しいラッピングを解き、中から出てきたのはベルベットケース。
「士郎さん、まさかこれは」
「その、まさか、さ」
ケースを開くと、中には煌めくダイヤで飾られたリングが上品に収まっていた。
「婚約指輪だ。秀実、結婚してくれ」
「士郎……さ……ん」
せっかくのダイヤが、涙でにじんでぼやけてゆく。
嬉しい。
嬉しいです、士郎さん。
「う、っく。うぅ、う……」
「泣くほどイヤか?」
「違います!」
嬉しいんです、と秀実は晴れやかな笑顔を見せた。
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