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第二十一章・6
月日は流れ、秀実は人気俳優になっていた。
彼の出演した青原監督の映画が大成功を納め、一気にブレイクしたのだ。
近藤組は解散したが、内情はさほど変わらず、撮影班も頑張っている。
試みに新人シンガーのプロモーションビデオを制作したら、それが当たった。
今では、様々な映像に挑戦している。
真田のカフェは店舗を増やし、県外に支店を展開するほどに成長した。
「……変わらないのは、私だけか」
ぼやく士郎に、秀実は微笑んだ。
「士郎さんは、変わらないでいてください」
僕は、そんな士郎さんが大好きなんですから。
「秀実は相変わらず、優しいなぁ」
士郎はコーヒーカップを口にして、つぶやいた。
人気俳優になってしまって、有頂天になると思いきや、今でも暇を見つけては私のお茶に付き合ってくれる。
変わらないのは自分だけではないことを、士郎は嬉しく思っていた。
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