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第二十一章・5

「今夜は何ですか? もう一発、ですか? それとも、抜かずの三発、ですか?」 「人をケダモノ扱いするなよ」  士郎は、挿れた時と同じくらいていねいに、秀実からペニスを抜いた。  ウェットティッシュで秀実の身体を清めた後、自分の始末をする。  そして、改めて秀実を胸の中に抱き寄せた。 「お願いというのは、な」 「何でしょう」  後始末をした、ということは、今夜のエッチはもうおしまい、ということだ。  士郎さんは改まって一体何を……? 「いや、どうしようかな。少し恥ずかしいし、明日の朝にしよう」 「ここまで焦らしておいて、一体なんですか? 今、聞かせてください」 「聞きたいか?」 「はい」  士郎は一度瞼を閉じ、そっと開いて秀実を見つめた。 「結婚を前提に、付き合って欲しい」 「え」  固まってしまった秀実に、士郎は不安になった。 (やっぱり、朝に言うセリフだったか?)  固まった後、秀実はやけにもじもじし始めた。 「いや、あの。正式なプロポーズは、もう少しシチュエーションを考えてやるから」 「……はい」 「ん?」 「お付き合い、してください。結婚を前提に」  秀実、と士郎は彼の手を強く握った。  士郎さん、と秀実はその手を握り返す。  そして二人は、キスをした。  情欲とは違う、温かな誓いのキスだった。

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