149 / 153
第二十一章・5
「今夜は何ですか? もう一発、ですか? それとも、抜かずの三発、ですか?」
「人をケダモノ扱いするなよ」
士郎は、挿れた時と同じくらいていねいに、秀実からペニスを抜いた。
ウェットティッシュで秀実の身体を清めた後、自分の始末をする。
そして、改めて秀実を胸の中に抱き寄せた。
「お願いというのは、な」
「何でしょう」
後始末をした、ということは、今夜のエッチはもうおしまい、ということだ。
士郎さんは改まって一体何を……?
「いや、どうしようかな。少し恥ずかしいし、明日の朝にしよう」
「ここまで焦らしておいて、一体なんですか? 今、聞かせてください」
「聞きたいか?」
「はい」
士郎は一度瞼を閉じ、そっと開いて秀実を見つめた。
「結婚を前提に、付き合って欲しい」
「え」
固まってしまった秀実に、士郎は不安になった。
(やっぱり、朝に言うセリフだったか?)
固まった後、秀実はやけにもじもじし始めた。
「いや、あの。正式なプロポーズは、もう少しシチュエーションを考えてやるから」
「……はい」
「ん?」
「お付き合い、してください。結婚を前提に」
秀実、と士郎は彼の手を強く握った。
士郎さん、と秀実はその手を握り返す。
そして二人は、キスをした。
情欲とは違う、温かな誓いのキスだった。
ともだちにシェアしよう!