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第1話
自分でも、どうしてこんな男を好きになったのか分からない。
どうして、どうして、どうして……。
分からないけど、ただ惹かれていた。これが恋だと、堂々と好きだと言うことができる恋なのだと。そう、浮かれていた。
「はぁ? アイツが?」
わはは、と心底可笑しそうに笑う俺の恋人……だと思っていた男。
「そんな訳ねぇじゃん」
「だったらなんなの? なんでアイツが家にいるの?」
「なに、妬いてんのかよ」
「ば、ばか! 僕はただ……!」
男は、プイとそっぽ向いてしまった小綺麗な顔をした男の肩に腕を回す。
「心配すんなって、アイツを抱いたことなんて一度も無いんだから」
「え?」
「あんな地味でエロさの欠片も無いチビ、俺が本気で相手にすると思う? ちょっと声かけたら目ぇ潤ませてさ、なんでもやるって言うから。まあ、家政婦みたいなもんだよ。飯も作るし掃除もするし、しかも無料! ルンバよりもお得じゃね?」
「なんだよそれ、ひっど~い!」
酷い、なんて言いながら、拗ねていたはずの男も楽しそうに笑っている。俺のことを、笑っている。
俺が作った夕飯を食って、まったりテレビなんか見ながら……ふたりを持て成す為にキッチンであくせく働いている俺のことを、笑っている。
情けなくも俺は、ただただ頭が真っ白で。罵倒する言葉も、勇気もどこかに忘れてしまったようで。ギュッと……エプロンの裾を握り締めた。
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