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「ま、真似してみた、うん。ひ、ひ、比良くん、一人なんだ? ほほほ、他のみんなは?」 さらに挙動不審ぶりが増したクラスメートを気にするでもなく比良は答える。 「少し具合が悪くて、俺だけ外れて一人でゆっくり回ってるんだ」 回答を聞くなり、柚木の赤かった頬は極端に青ざめた。 「救急車呼ぼうか!?」 比良は首を左右に振る。 何とも微笑ましいラッコのパフォーマンスに他の客が拍手を送る傍ら、柚木は尊敬するクラスメートの体調を心から案じた。 「おれ、保健委員だから! いざとなったら水族館の医務室まで運ぶから!」 自分より18センチも身長が低い柚木の精一杯の言葉に比良は頷いてみせた。 「心配してくれてありがとう」 そこへ。 別行動をとっていたはずのアルファのクラスメートが比良を見つけてやってきた。 「じゃ、じゃあね!」 意識高い系のご一行様が合流する前に柚木はラッコのプール前からそそくさと離れた。 チラリと振り返り、具合が悪いという比良のそばに集まった面々を見、再認識する。 (月とスッポン、高嶺の花、すぐそこにいた比良くんはやっぱり遠い存在だ) 正午になり、水族館前で一旦集合した後に芝生広場で昼食休憩に入った。 日当たりのいい芝の上で友達とお弁当を食べていた柚木は、木陰で悠然と食事をとる学校最上層のグループを、その輪の中心にいる比良のことを気にかけていた。 (比良くん、ごはん食べてなくない?) 先程からミネラルウォーターのペットボトルを傾けてばかりだ。 女子に差し出されたサンドイッチをやんわり断る姿を目撃すると柚木は表情を曇らせた。 (でも、おしゃべりできて嬉しい) ラッコを見て笑った比良くん、かっこよかった。 きっとラッコの方も比良くんを認識したはずだ、めちゃくちゃ硬派で男前なお客さんだって覚えたに違いない、また会いにいったら貝殻をプレゼントしてくれるかもしれない。 (あんなかんじで恋人とデートするのかな)

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