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「先生、休み時間のときはどうなってるんですか?」 「比良クン、まだ映ってる?」 一限目が終わり、教卓前に集まった生徒達はスリープ中のパソコンにがっかりする。 「そりゃあ、比良にだって休み時間が必要だろう、ずっとパソコンにはりついてるわけじゃあない」 柚木は机の横に提げているスクールバッグから携帯を取り出した。 比良からのメールは未だ受信しておらず。 本当に土曜日にデートするのか、不安要素しかない柚木は自分から断りのメールを送るべきか迷っていた。 (学校だったら死角があって、何とか、その、うん、対処できた) でも街中だとそうもいかない。 すなわちマストくんが野放しになってしまう……ヒィィ……。 (比良クンとデートなんて、夢みたいで、嬉しくて、ついつい流されてしまったけれど) やっぱり、おれからハッキリ断るべきだ……。 「ん?」 メールアプリの比良のアカウントを開いて柚木はパチパチ瞬きする。 以前は未設定だったアイコン画像が新しく設定されていて、まじまじと凝視した。 「ねぇ、見て、比良クンのアイコン」 同じタイミングで比良のアカウントをチェックしていた別の生徒が、近くの友達に携帯を掲げてみせる。 「これって……ボタンの写真?」 「なんか意味深、特別なボタンとか?」 (いやいやいやいや) ただの安いシャツのボタンです。 本体は大豆がボロボロにしちゃいました。 (こんなボタン……アイコン画像にするなんて……) 賑やかな教室の片隅、柚木は携帯を両手でぎゅっした。 お断りメールの文章を考えるつもりが、思ってもみなかった反則ワザに病みつきになりそうな昂揚感が滾々と湧き出してくる。 ぺちゃんこな胸はたちまちたっぷり満杯になった。 絆されやすいへっぽこオメガ、やはり別格のアルファには降参する他ないらしい……。

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