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「うなじ噛むのは、ほんと、まだ……だめ」 聖域への深い口づけで確立される番の絆。 唯一無二の繋がりで早く結ばれたがっている比良を、柚木は、彼も自分も偽らないよう正直に拒む。 「おれ、まだ……自信ない……ただただドへっぽこで、自分のこと、あんまり好きじゃない……」 図太くも端整な唇にうなじをやんわり食まれる。 物欲しげに啜られると声を上擦らせ、もどかしそうに内股になって膝同士を擦り合わせ、それでも頑なに拒んだ。 「今は、まだ、全然だめ……」 「俺はこんなにも柚木のこと好きなのに?」 「っ……っ……比良くんの隣に自信もって並べるように、なりたい……です」 「それはいつになる……?」 「んっ……もうちょっと勉強頑張って、うん、頑張りたいこと一つくらい何か見つけて……よくやった、えらいえらいって、自分自身を褒められるようになったら……」 「そのときは、柚木、俺に聖域を捧げてくれるんだな……?」 (比良くんの声が耳元でする度にクラクラする) 背後からしっかり抱きしめられ、うなじに触れる息遣いに全身どろどろ化しそうになりながら、柚木はこっくり頷いた。 「嬉しい」 うっとり囁いた比良は柔らかな肌におもむろに吸いついた。 「ぁ、ぅ」 刻まれた唇痕。 所有欲剥き出しの兄の振舞に弟は空笑いする。 「いつになるんだか」 柚木はふやけた目で眞栖人を見た。 『誰がそんなことさせるかよ』 絶対的支配者にも等しい番の片割れなるアルファに抱擁されながら。 外敵を蹴散らすと言い切った彼が不敵で、頼もしくて、恋しくて、抑えられない想いに駆られてオメガは見つめた。 もう一人のアルファに心臓の半分を捧げたくなった。 (……眞栖人くん……) 心の中の呼び声に反応するように、比良の腕の中に仕舞われている柚木に眞栖人は平然と身を寄せる。 「誰からも必要とされてるのに自信ないとか難儀な奴……」 「ふぇ……?」 「お前、面倒だからってもう教室で着替えるんじゃないぞ」 「ほぇ?」 「確かにそれは感心しないな」 「阿弥坂みたいにお前を狙ってるアルファ、いや、ベータの中にだっているかもしれない」 「不用心に肌を見せないでくれ」 「わかったな?」 双子の男前ボイスを両耳に交互に注がれて柚木は目を白黒させる。 「ぷひっ」 「ぷひっ? 今、鳴いたのかよ?」 「ぷひぃ……どっちの耳も……おばかになる……」 「……」 眞栖人は失笑した。 惹かれてやまない奥二重まなこのそばに笑いながらキスをした。

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