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7-3

慎ましげに解き放たれたオメガの雫。 うっすら紅潮した肌に白濁した体液が点々と散った。 「んっ……ン……ン……っ……ぷぁ……っ……」 唇から引き抜かれていった親指が透明な糸を引き、気にする余裕がない柚木は陶然と息を荒げ、力なく背後へ倒れそうになる。 「柚木、偉いな、ちゃんと射精できた」 ずっと同じベッドにいた、すぐ真後ろで番の片割れを見守っていた比良は熱の増した体を喜んで抱き止めた。 「ふぁ……はぁ……比良く、ん……っ……んっ……む……」 後ろから頬擦りされて、キスされて、酸素が頭に回らずに脱力しがちな柚木は番の片割れに身を預けた。 巣の中のヒナに餌付けするように口づけしながら、比良は、真正面に居座る眞栖人を薄目がちに一瞥する。 自分を鬱陶しがっている双子の兄に眞栖人は唇を吊り上げてみせた。 「射精くらいするだろ、性別上、柚木はオスだぞ」 半開きな唇を上下順々に啄んでいた比良は双子の弟に嘆息してみせる。 「男体のオメガは男性よりも女性としての生殖機能が上回る。柚木に無理をさせるな」 「過保護だな。番っていうよりヒナと親鳥だ。その羽が邪魔くさい」 眞栖人はぐったりしている柚木の胸に回された両腕を揶揄した。 比良は自分のものといわんばかりに、その両腕に力を込める。 「……け……けんか、やだってば……やめてよぉ……」 ぐったりしていたはずのオメガは、隙あらば骨肉の争いでも始めそうな双子の不穏な空気に意識を呼び覚まされた。 「喧嘩してない。三人で仲良くシてるだろ」 「ち……違ぁぅ……そーいう意味じゃぁ……」 「柚木、俺のことは許さなくていいから」 「は……はぃ……?」 比良の熱烈なバックハグに柚木は目をヒン剥かせる。 聖域なるうなじに唇が押し当てられると条件反射で全身をぷるぷるさせた。 「嘘をついて、騙して抱こうとするなんて、普段の俺なら考えも及ばなかった」 台詞を綴る度にうなじに些細な刺激が与えられ、えもいわれぬ熱が生まれて、心臓がちょっとずつ溶けていくような。 「俺が軽蔑する考えだ。まるで眞栖人みたいだ」 「誰かを抱くのに嘘なんかつかない、俺は」 「柚木は俺にそこまでさせる」 「責任転嫁するな」 「たった一人、君だけが俺を堕落させる」 比良は柚木の聖域にキスした。 ほんのり赤らむ肌に焦がれる余り、舌先を滑らせ、病みつきになる運命の香りを吸い込んだ。 「このまま(つが)いたい」 熱い吐息を直に浴びて、どろりと、溶け落ちそうな。

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