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Chapter 2―3

ヒカルのマンションは、店からタクシーで10分ほどの距離で、高級マンションが建ち並ぶ中にあった。武智はこの辺りにあまり土地勘がなく、少し物珍しい。 「ヒカルさん、しっかりしてください。」 武智が呼び掛けると、うぅっ―――と、ヒカルが目を閉じたまま呻く。 真っ直ぐ歩けもしないほど酔っ払っているヒカルを一人にする訳にもいかず、武智が送るはめになった。 当然だ。 社長の愛人を放り出して帰れる筈がないと、また言い訳のように考えてしまう。 ―――言い訳って、自覚してる時点でダメなんだろな。 己のちぐはぐな行動に、武智の口から思わずため息が出た。 「ほら、何階ですか?」 タクシーの中で寝てしまったヒカルの、男性にしては軽い体を支えながら問いかける。 何も返事は無かったが、エレベーターへ引き摺るように乗り込むと、奇跡的にヒカルが目を覚ました。 「き、9階。901。あ~、―――きもちわるい。」 「すぐ着きますから。」 エレベーターが9階まで行くと、すぐ目の前が901号室だった。室内に入りヒカルを下ろして、靴を脱がせる。 酔っ払いの介抱をしているのに、厭らしく感じてしまうのは錯覚だ。 そう自分を誤魔化すが、成功はしなかった。 「ヒカルさん、気持ち悪いなら、トイレ行きますか?」 「ベッド。」 「大丈夫ですか?ベッドで吐かないでくださいよ。」 「だいじょうぶ。」 リビングを通って入ってきた方ではないドアの向こうが寝室だった。 ドサッ―――と、何サイズか知らないがやたらとデカいベッドにヒカルを転がす。さすがに肩が痛んで、軽く腕を回しながら、武智はドアの方へ逃げるように一歩下がった。 「水いります?冷蔵庫開けていいなら、持ってきますけど。」 この部屋から出ていく理由が欲しくて、転がっているヒカルに声をかける。ヒカルは眠気が消えたのか、しっかりとした顔でじっと武智を見つめ返した。 寝てくれればいいのに―――と、思う。 「ううん。いらない。それより、これ、脱ぎたい。」 シャツのボタンを外しながら、甘えた声を出すヒカルに、武智は諦め半分で天を仰いだ。

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