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Chapter 4―1

〈H side〉 目の前で美味そうにコーヒーを飲んでいる男に、椿山ヒカルは若干呆れていた。 「ヒカルさん、また会えますか?」 この能天気な問いを口にした男の名を、村上武智という。見掛けはまあまあイケメンであるし、ちょっと雰囲気があるから恐らく女にはモテてきたのだろう。 「うん、もちろん。いつでもお店においで。」 「いえ、お店には伺いますが、そうではなく。あ、そういえば、お休みはいつですか?」 村上が困ったような顔で、ヒカルへ甘く微笑む。 ―――それで騙そうなど百年早い。 ちょっと甘い顔や態度を見せれば、素人の女であらやれば面白いように転がるかもしれないが、己には通じない。 ヒカルは鼻で笑いたくなるのを堪えて、何でもない顔をしながら立ち上がった。村上の探るような視線を背中に感じる。 あからさま過ぎる。 隠す気もないのか。 チェストの引き出しの一番上を開けて、一枚のカードを取り出し、それを村上に差し出した。 「うちの店のカード。そこに書いてあるけど、木曜から日曜の週4で、夜の8時から1時までの営業だから。」 「いつなら二人で会えます?できたら連絡先とか知りたいんですが。」 また村上が甘えるような顔をする。 ヒカルに通じていないと分かっていながら、この態度なら相当肝が太い。実際に優秀なのかもしれないが、喧嘩を売られているようで鼻につく。 「ん~、じゃあね、村上さんの教えて。会えそうな時は連絡する。それでいい?」 「分かりました。連絡、待ってます。連絡してくれなかったら、お店に押し掛けますからね。」 村上が悪戯っ子みたいな顔で笑う。 どこまでも自信満々な態度だ。へし折ってやりたくもなるし、逆に少しだけ守ってやらねばならない気にもなる。 「ふふ、じゃあ、連絡しないでおこうかな。」 ヒカルも悪戯っぽく微笑んで見せながら、どんな風に遊んでやろうかと考えていた。

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