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Chapter 4―3
この辺りで力を持つ暴力団組織は、相澤組と喜原組の2つ。小さな揉め事はちょこちょこ起こりつつも、双方の現組長に争う気がないために大きな抗争にはならず、一般人にとっては比較的平和な地域である。
この片翼、喜原組の組長にあたる喜原昇太郎が、わが社『キハラホーム』の会長で、その息子の勝基が社長だ。
―――似てない。
この二人が並んで座っているのだが、顔立ちも印象も違っていて全く親子に見えなかった。
「次をお作りしましょうか?」
「村上には弱めで頼む。」
派手なドレスに身を包んだ美人に問われ、武智の代わりに部長の山形が答えた。武智が酒に弱いと素直に信じているのだろう。
本当に人が良い。
山形の言葉を聞いていたらしく会長が、突然こちらに声を投げてきた。
「いんや、山形。飲んだだけ強くなるのやから、ドンドン強いのをやれ。つぶれたら、そこのキレイな姉ちゃんに介抱してもらえるしのぉ。」
ウハハ―――と、会長が豪快に笑う。
厳めしい顔立ちから、巨大な岩を思わせる印象で、人好きのする雰囲気を放つ不思議な人だ。
対して、息子の社長はというと、母親似らしく端整な顔をしている。
「会長、そう無理に飲ませるものではありませんよ。」
社長が穏やかに諌める。
整った顔に静かな微笑みを浮かべながらも、切れ味の鋭い刃物のような印象が消えない人だ。
こんな人の愛人なのだ。
ヒカルは一緒にいるのが恐ろしくはないのだろうか。
―――もしバレたら、
武智がヒカルに手を出したと知られたら、と想像して今さらながらゾッとなった。情報を取れる見込みが少ない愛人に関わるのは、やはりリスキー過ぎるかもしれない。
本当に今さらだが。
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