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第13話
「おい!そろそろ時間だぞ!」
どんどんと扉が大きな音を立てる。
「まったく、ガルーめ!少しは気を使え!!」
扉の外に向かって大声を張り上げたラントアが自分の腕の中を見て微笑む。
寝たふりと分かる不自然な寝息と、そっと髪に触れただけでビクッと跳ねる身体。
「そろそろ、起きる時間だと言っているが、どうだ?」
心配する声にスーラが目を瞑ったままで首を振る。
「だが、今日は私の成人の儀とお前を子孫残しの相手として皆に披露しなければならない…どうあっても出てもらわなければならない。」
「誰のせいで動けなくなって…って…見るな!」
目を開けた瞬間に自分を見つめている心配そうな目と合い、縛られたままの手でラントアの顔を背けさせようとしたその手を掴まれ、ぐっと引き寄せられると二人の唇が合わさる。
「んーーーーーっ!!」
唇を閉じて拒否しようとするが、背中を手でなぞられ、のけぞった瞬間に開いた口から舌が入れられた。
「ふあっ…ん…はぁあん…んん…」
いいようにラントアに口の中を舌で嬲られ、嫌だと言う振りをしてみても、腰は震え、その気持ち良さに飲み込まれていく。
離れた唇を名残惜しそうに見つめるスーラの足の戒めを解くと、腕のバングルにチェーンを取り付けてからその戒めを解いた。
「何これ?」
スーラが不満そうに付けられたチェーンを掴む。
「術によって特別に作られた物だ。儀式の一つ…ああ、お前の逃亡防止とかで付けたわけではないよ。大体、こんな身体では逃げられない…だろ?」
スーラの腰を引き寄せ、双丘の間にラントアが指を入れた。
「やめ…っあぁ!」
「これならすぐにでも俺のを挿れられそうだな…」
「はぁああん…やだっ…ぐにぐにしない…でぇ…ひあっ!!」
ぬぷんと音を立てて指が抜かれる。
つーっとそこから液体が滴り落ちた。
「これもお前が俺の子孫残しの相手となった証か…」
それを指で拭うとラントアが舐めた。
「お前の味がする…スーラ。」
顔を真っ赤にして横を向くスーラが持ったままでいたチェーンを、ラントアに向かって投げつけた。
それを何食わぬ顔でラントアが受け取り、自分の手首にもはめられているスーラと同じバングルに、チェーンの反対側を取り付けた。
「これでいい。」
満足したように頷いたラントアが手を伸ばして、ベッドのそばに置いてある布を掴む。白地に煌びやかな金糸の刺繍が全面に施され、様々な小さな宝石が布が翻る度に光に当たって輝く。ラントアがそれを片腕に掛けると、スーラを支えながら立たせ、その体に背中側から布を当てるとついている数本の紐を背中側で結んでいく。
布がスーラの体を覆い隠すと、自分は礼装用の服に着替えた。
「スーラ、お前の黒い羽根がよく映える。本当はこのような姿、誰にも見せたくはないのだがな…」
そう言って、スーラの羽根を一房掴むと、それに口付けた。
ビクッと体を揺らし、スーラが膝から崩れ落ちそうになる。
「さあ、時間だ。おっと、お姫様は立っているのも困難か?」
ベッドに座り込みそうになるスーラをさっと抱き上げる。
「お前があんなに無理矢理するからっ!!」
「まだ足りない…スーラ…早く戻って来ような。」
「…お前は一族の仇だ!!僕は…僕はお前との子供なんか産む気はない!!」
抱き上げられた体をばたつかせるが、キツく抱きしめられ、ラントアの口が近付いてくる。
キスされる!?
スーラが目を瞑り身構えたが、それはスーラの口を通り過ぎて耳元に近付いた。
「あまりそれを言うのは賢い選択ではない…先ほども言ったが、お前の国が滅んだ事はこの国の一部の人間しか知らぬ事。もしもそれがバレれば、お前の身の安全はないに等しい。」
「だったら今ここで殺せ!僕は皆の元に行く!!」
「させはしない!!お前は俺のモノだ!!例えその身を動かせないようにしても、その心を凍てつかせ何も感じなくしたとしても、俺はお前を手放さない!!…それと儀式では従順なフリをしていろ!尋ねられる言葉には頷け!拒否すれば…俺はお前を皆の前で抱かなければならない…。」
青ざめたままで声も出せないスーラにラントアがニヤニヤしながら耳元で囁いた。
「俺にはそんな趣味はないが、お前がしたいならそれは拒否しない…俺のモノだと分かるまで、皆が納得するまでお前を抱き潰してやるよ。」
「…分かったよ…拒否しなきゃいいんだろう?」
くそっと横を向くスーラに、そうだとラントアが頷いた。
「お前の身体は術によって俺を受け入れてしまうようになってしまった。だが、その心までを俺は奪いたくはない…お前のままで、自由なままでいて欲しい。それが俺の願いだ。そして、俺はお前以外を抱かない。お前の身体を作り変えたその罪への償いとでも思って欲しい。まあそもそもお前以外を抱く気などないが…。俺を受け入れてさえいれば、お前に不自由のない暮らしを約束する。これらは俺とお前の約定、二人だけの秘密の約定だ。」
「…わかった。」
頷くスーラにありがとうと言うと、ラントアが扉に向かった。
扉の前でガルー!と、声を張り上げる。
はいはいとガルーが返事をしながら扉を開けた。
「ほう、色っぽさが増したな、スーラ…って、痛ぇよ!!」
目を見開いてラントアに抱かれたスーラに軽口を叩いたガルーが、飛び上がって声を出した。その後ろから先程の銀髪の男が顔を出し、二人に向かって頭を下げる。
「ラントア様、スーラ様、本日はおめでとうございます。スーラ様、先程のご無礼はどうかご容赦を…。」
足の脛をさすりながらもガルーがその男の腰を抱き寄せた。
「まだ、ふらついてんだから気をつけろよ…俺もラントアがしてるようにお前を抱き上げてやろうか?」
「私は大丈夫です…ほら、お二人が困っていらっしゃる。」
「ラントアが?自分達だって、しっかりとやることやってたんだから、別に…ってぇええええ!」
銀髪の男の足がガルーの向こう脛を思い切り蹴った。
その痛みに耐えかねたガルーがしゃがみ込む。
「本当に容赦ないよな…はぁ。」
「ガルーがあまりにもデリカシーがなさ過ぎなんです。」
二人のやりとりを見ていたラントアがその横を黙って通り過ぎて行く。
ガルーが男を有無を言わさず抱き上げると、その横に早足で追いつく。
隣をチラと見たラントアがガルーにため息混じりで言った。
「お前はきちんとした紹介も出来ないのか?」
あ!と、言ったままで立ち止まったガルーを見て、ラントアも数歩先で立ち止まる。
ガルーが男を下ろすと、ぽりぽりと頭を掻きながら、俯き加減でいつもとは違う小さな声を出した。
「あーっと、なんだ…その…俺のパートナーになったサンクリウスだ…地下の魔道士…なのは知っているよな…うん、紹介終わり!!」
「お前なぁ…まあ、いい。サンクリウス殿、こいつの事をよろしく頼む。何かあった時には俺がこいつを鞭打ちの刑に処するので、いつでも言ってくれ。」
ふふっと笑うと、サンクリウスは頭を下げた。
「ありがとうございます。しかし、この国の王となられる方にそのような事で手を煩わせるのは忍びない事。何かありましたら私にも術がございますのでご心配なく。もし、本当にどうにもならなくなった時にはお願いするかもしれませんが…」
「それは心強い。何かあった時には存分にこの力をお貸ししよう!」
はははと笑って、ラントアが歩き出した。
「ガルー!お前達は俺達の横に座れ!さっさと食べて、飲んで…あとはお互いの部屋で楽しもう!」
「おいおい!主役のくせにさっさと引き上げる気でいるのか?!」
「ふっ!皆が見たいモノを見せてやる為なんだから、文句はないだろう?」
そう言うと、はははと大声で笑いながら、真っ赤な顔のスーラを抱いたラントアが儀式の間に入って行った。
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