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第14話
「その全てを………受け入れます。」
スーラの肯定の言葉を聞いた神官が二人の間を繋いでいた鎖に触れる。
するとそれは真ん中からサラサラと粉に変わり、二人の体内に吸い込まれていった。
「これにより絆は体内に入り、それが再び出会う時、新しい生命が宿る。お二人に幸多からん事を。」
神官が一礼し儀式の終わりを告げると、王は拍手を送り、女王は涙を拭った。
ラントアは今まさに涙を拭っている人間の女王との子であって、王の子孫残しとの子ではなかった。
何事もなければラントアは弟王子として、城付きのパートナーの所へ婿に行くか、この城でその一生を肩身狭く生きていく人生のはずだった。
しかし、子孫残しとの間に産まれた兄はラントアと入れ替わるように、ラントアが産まれると直ぐにその体の弱さによって亡くなった。
産んだ彼の国の者も、もともとが大変寿命の短い種族だった為、子を産むとすぐに亡くなってしまっていた。
そこで、王は他の城より人間の妻を迎えていた。
それがラントアの母。
そしてラントが亡き兄の代わりにこの国を継ぐ王子となった。
しかし、彼の国の者達からは異が唱えられた。
約定では、子孫残しとの子が王となるとなっていた筈だと騒ぎ立てたが、読み返してもそのような文言は見当たらず、しかしそれに納得しない彼の国の者達の中には人間達が約定を書き直したのではないかと言う者まで現れた。
その後も彼の国との間にはその事で不穏な空気が何度か流れた。
そのような中でスーラはこの国に入り込み、この国を、人間達を一人残らず滅ぼす為の計画の一端を担う筈だった。
しかし、それはいつの間にかラントア達の知るところとなり、裏をかかれて自分の国を滅ぼされ、一人その生き残りとして、捕虜に近い身として、スーラはその身に術を施され、仇の相手の子を産む為に今、約定を結んだ。
二人を祝う宴の始まり、王が皆を前にして声高らかに宣言した。
「古の約定に則り、この者をラントアの子孫残しの相手とする。」
王の言葉にまるで地鳴りのような声が城を内と外から包んでいく。
「これが俺達への期待…いや、むしろ子を産まねばならないスーラ、お前への…。」
「…寧ろ、プレッシャーでしかないよ、こんなの。僕に子ができなかったら、この人達の期待が僕にどんな風に向かってくるのか…」
「…そうだな。いや、それなら俺の責任も重大だ。お前だけがいくら頑張っても子はできないからな。」
「ばっ!」
スーラの大声を出しかけた口をラントアが自分の口で塞ぐ。
それを見た周囲が大盛り上がりに囃し立て、その中でラントアが口付けたままでスーラを抱き抱えながら立ち上がった。
隣に座ったガルー達に目配せすると、二人も立ち上がり、ガルー達がラントアの為に人波をかき分けて、道を作っていく。
その後を二人が歩き、扉の前で王と女王に一礼すると、部屋を出て行った。
ガルー達は扉を閉めると、ラントア達とは逆方向、ガルーの部屋に向かって歩き出した。
「ラントア様達をお部屋まで送らなくてよろしいのですか?」
尋ねるサンクリウスにガルーが後ろを振り返って答えた。
「あんな目の前の部屋で何が起こるって言うんだ?まあ、起こったとしても、ラントアだったら何事もなく対処しちまうよ。あんなひょろそうに見えても、俺の部隊丸ごと潰すくらいに強いんだぞ、あいつ。まあ、俺がいるからドローだけどな。」
「ガルーの部隊って、騎士団の中でも精鋭達の集まりじゃないですか?!それをラントア様お一人で?」
目を丸くするサンクリウスを見て、おいおいとその身体を抱き上げた。
「俺がいるから、ドローだって言ったろう?それより、今夜の俺の相手はお前だ。さっきは体力温存しろって言われて我慢させられたからな…と言うより、あれからずっと我慢し続けていてもう限界だ!覚悟…出来てるよな?」
「…存分に…」
その言葉と共に二人はガルーの部屋の扉の中に消えて行った。
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