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第11話
「何が無理なんだ」
自分の意のままに話が進まず、気分を害すのではと思ったが意外にもアリソンは真剣だ。美風は少しこの〝上級悪魔〟の見方が変わった。
話の内容には頭が痛むが。
「人に言われて『はい、好きになります』なんて出来ないの。アリソンだって、魔界にいる知り合いを直ぐに好きになれって言われて好きになれるか?」
「ならない。俺に命令など出来ないしな」
「命令……? ま、まぁでもそうだろ? 誰にも他人の感情に干渉することは出来ないんだ」
まだ納得でき兼ねるといったアリソンの顔。
命令など気になるワードがありつつも、一体この時間は何なのだと美風は頭を捻った。それでもとにかく今はアリソンの一方的な考えは改めさせたかった。
「そもそもアリソン、アンタまじですげぇ男前なんだから恋人ぐらい本当はいるだろ?」
「いない」
即答する声音が何か他人事のように少し冷たい。美風はまさかという思いで口を開いた。
「えーと、もしかして、アリソンってそれだけ長生きしてるのに恋人がいたことない?」
「あぁ」
(マジか……。もしかして思ってるほどモテない? 性格に難アリってやつ? 確かにかなり強引だしな。だからこんなに──)
「恋人など特別に傍に置かなくても、好きなときに女や男を抱ける。ただ馴れ馴れしく恋人気取りや、懐に入りたがる者が許せないだけだ」
モテ発言をしたかと思えば、これまたなんと厄介な男だ。でもこれは好機だ。美風は勝利(?)を確信した。
「懐に入れないなら、オレなんか絶対ムリじゃん。言っとくけど、オレ好きになった相手にはめちゃくちゃ甘えるよ? それに甘えて欲しいし。何でも心から話し合えて、お互い支え合いたいんだよね。そしてずっと傍にいて欲しい。だからオレは懐に入りたいタイプでかなり重いよ?」
どんなタイプだよと言ってて恥ずかしくなってきたが、言ってやったと美風は満足する。恋愛はしたことがない上に誰とも付き合ったことがないけど、きっとこんな風に感じるのだろう。
美風の重めの恋愛観でアリソンもきっと目が覚めたはず。期待を込めてアリソンを窺うが。
「ミカは構わない。入ってこい」
「……」
(だーかーらーなんでーー)
振り出しに戻った。
「ミカとは話していてもストレスがない。媚びへつらう事もないし、お前の素直な感情というものが心地いいとでもいうのか。俺もこんな風に感じるのは初めてだ」
「そ、そうか……」
悪魔特有の策で人間を翻弄し、手玉に取る。という訳ではないということは何となく美風には通じた。
根拠はない。ただの直感だ。だけど美風はその直感を信じることにした。
アリソンが初めてと言っているところから、きっと正直な気持ちなのだろう。自身の気持ちを押し付け過ぎるが、彼自身の気持ちを否定してはいけないのかもしれない。逆の立場で好きな相手に〝その気持ちは違う。勘違い〟などと言われたら悲しいからだ。
だからと言ってその気持ちに応えるかは別の問題である。
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