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第10話

 美風はどうにか視線を外し、冷静になれと落ち着かせる。アリソンの力に引っ張られてはいけない。それにアリソンは肝心要の悪魔についてはスルーをしてきた。しらを切る気満々だ。  でもそれはとりあえず今は脇に置くことにして、まずは先に別の攻め方でいくことにした。 「アリソン、伴侶っていうのは、お互いが愛し合ってないとダメなんだ。それはもちろん分かってるよな?」 「……愛?」  少し戸惑う表情のアリソンに、美風は内心しめたと喜ぶ。顔に出さないように気をつけなければと気を引きしめる。 「そう、愛。その人を思うだけで胸がキュウっと高鳴ったり、時々くるしくなったり。毎日その人の事ばかり考えてしまうとか。アリソンはそんな風にオレのこと思ってるわけじゃないんだろ?」 「確かに胸がキュウ? とはならないし、苦しいなどと感じてはいないが……。別にそんな愛とやらが無くてもいいだろ。俺が美風を傍に置きたい。それで十分だろ」 「だーかーら、それがダメなんだって! 人間界ではお互いが愛し愛されて結ばれるんだよ。好きでもない奴と無理やり一緒になるとか……。それはいくら悪魔だからって傲慢だし、自分勝手すぎる! そんな事されたらオレは死にたくなるな」  いかにも悲しそうな顔を作り、大袈裟なことまで言ってみる。チラリとアリソンを見ると彼は少し狼狽えているようだ。眉を寄せたり下げたりと、忙しない動きを見せている。 「分かった……。無理やりに伴侶にはしない。だから早く俺を愛せ」  美風の両腕をがっしりと掴んでアリソンは訴えるが。 (全然分かってない!) 「アリソン……それに大事なことも忘れてるだろ?」 「大事なこと? まだあるのか?」  不満そうな顔を隠さないアリソンに、どうしてついさっき出会ったばかりの自分にここまで執着するのかが分からなかった。気に入っただけで伴侶とまで考えるか? その顔ならどんな女も、もしかしたら男も意のままだろう。わざわざ美風を選ばなくてもいいのにと。 「オレとアリソンじゃ寿命が違いすぎる。ほら、だいたい悪魔とかって人間より遥かに長く生きてるっぽいじゃん。アリソンは何歳?」 「俺は二百五十年生きてる。時空が違うが、確かにミカの言うとおりに人間の命は一瞬だな」 「二百……五十……。とても長生きでいらっしゃる……」  思っていたよりもかなり長生きしている事に美風は驚いてしまう。見た目は二十代後半から三十代前半だ。それが二百五十歳。時空が違うとはいえ、悪魔の体は一体どうなってるのだ。 「だから早く愛せ」 「いや、だから無理なんだって」  どうすれば分かってくれるのか。美風は涙目になってしまった。

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