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第24話

「アリソン」  ここで同じように固まってる場合ではない。親友が言い掛かりをつけられていては黙ってもいられない。しかもアリソンはさっき〝昨日から〟と言った。きっとそれはアリソンの能力だ。生気を吸った時に情報を得るというもの。だから大学のこと、翔真のことを知ることが出来たのだ。昨日不満そうな顔でいた事がこれで明らかになった。  恐らく美風が自分ではない他人と、親しくしていることが気に食わなかったのだろう。 「翔真はオレの親友なんだ。だから親しいのは当然なの。だからさ、怒らないで」 「だが……」  まだ不服そうにアリソンは翔真を睨んでいる。まだ文句を言いたげなアリソンに、美風はその隙を与えないようにした。 「翔真、悪いな。この男前さんはちょっとワケありでさ……」 「……ワケあり?」  美風の謝罪に翔真の身体は呪縛から解けたように、少し肩の力が抜けていくのが分かった。  突然見知らぬ男から、因縁をつけられたのでは翔真があまりにも気の毒だ。 「そう、二日前のバイト帰りに公園で倒れてるところを見つけてさ。ほっとけないじゃん? で、アパートに連れて帰ったんだけど、これまた彼、アリソンって言うんだけど所々記憶を無くしててさ。しかも日本語ペラペラだけど、某国の王子だって言うんだ」 「某国の……王子?」  訝しげにチラリと翔真がアリソンを見る。  いや、そうなっても仕方ない。記憶を所々とはいえ無くしているというのに某国の王子って、自分なら直ぐには信じられない。もしかしたら、失礼ながらも冗談だろうと笑い飛ばすかもしれない。  かなり苦しい設定だが、アリソンの横柄な態度は王子という身分なら、翔真も少しは納得しやすいだろうと思ったからだ。見かけも中身も王子というより王だが。 「うん、信じらんねぇかもだけど。本人がそう言うしオレは信じてる。それにこの話が本当なら国の(かた)が迎えに来るだろうしな。それまでは翔真も悪いけど、この事は内密に頼むな」  よくここまで嘘を並べられたなと自分でも感心してしまう。アリソンの承諾もなしに。  当のアリソンは、美風のトンデモ設定にも文句を言うことなく黙っている。表情もイラついた様子はない。内心では煮えくり返っているかもしれないが。  目が合ったアリソンに美風は目で謝る。とにかく謝る。それが伝わったのか、アリソンは小さく頷いた。 (怒ってはいないみたいだな……良かった。アリソンありがと) 「分かった。美風がそう言うなら。でもまさか今一緒に住んでんのか?」 「あ……あー……うん。だってやっぱ記憶なくしてる人はほっとけないだろ? それにアパート周辺は治安は悪くないと言えど、何があるか分かんねぇ世の中だし」  納得しているのかそうでないのか、翔真はまだ複雑そうな面持ちだった。でももうこれ以上はアリソンについては説明しようがない。

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