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第48話

 風呂から出ると、アリソンは美風の傍から一時も離れずついて回ってきた。狭い部屋なのに。アリソンなりに美風の身体を思って、心配しているのだろうが、美風はそんな柔な体ではない。それを何度言っても「分かった」と口にはするが、行動が一つも分かっていない状態だった。  そろそろ夕飯の買い出しに行きたい。冷蔵庫の中は調味料の類いと卵しかない。  アリソンはまだ本来の姿を維持したままだ。そのままでは到底表には出せない。 「アリソン、今から晩飯の買い出し行くんだけど、留守頼める?」 「俺も行く」 (だよね~。ホント今日のアリソンは言うこと聞いてくれねぇな) 「その姿ではムリだって」 「帽子とメガネを持っていただろう? 貸してくれ」 (そこに気づいてしまったかー!)  美風は盛大にため息を吐いて、仕方なくクローゼットからワークキャップと黒のフレームの伊達メガネを取り出した。身に付けてもらうが、美風は絶句する。 (これはこれで目立つ……。どこのハリウッドスターが来たんだと、余計に注目されてしまうわ) 「アリソン、ダメだわ」 「なぜ」 「なぜって、鏡見てみろよ! 逆に目立つし、どっちにしたってアリソンは目立つから、やっぱ今日は外出は諦める」  夕飯はデリバリーで頼むことにした。アリソンは美風が傍にいれば問題ないので「そうか」とキャップとメガネを返してきた。美風が内心で地団駄踏んだのは内緒だ。  それから美風らはまったりと時間を過ごす事にした。アリソンと出会ってからの休日は、バイトがない時は二人でDVDを見て、夕飯を二人で作る。まるで同棲しているカップルかとツッコミたくなるような生活だ。めっきりと外出も減った。  心置きなくショピングモールで買い物したり、テーマパークへ行ったりとしたいが、アリソンはどうしたって目立ってしまう。それに低級の魔物らが可哀想だ。アリソンに怯えて逃げないとならない。だから容易に二人で外出は出来ないのだ。  夜七時を回った頃、そろそろデリバリーを頼もうとした時、寛いでいたアリソンが何かの気配を感じたのか、耳を澄ますような素振りを見せた。 「アリソン? どうかした?」 「あぁ……少し外に出る」 「は? 外って今からどこに? 遠くに行くのは……」  美風は続きの言葉は飲み込んだ。アリソンの雰囲気に、うるさく言うのは(はばか)られたためだ。  まだ白銀と青い目を保ったアリソンは、玄関ドアを開けて外に出る。外は丁度暗くなってきた頃合だ。人の往来はあれど、昼間よりは目立つことがないだろう。それでも心配な美風はアリソンについて行く。  アリソンはチラリと美風に目を向けたが何も言わないところをみると、ついて行っても問題ないようだ。

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