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第94話

「陛下も申されていたように、奴らは王族を敬う種族じゃありませんので、品位だとか気にするような奴らではないでしょう。それでもやはり魔王という存在は特別という意識はあるようで、その王妃であるミカ様の、対等に接されるお姿に惹かれ、感銘を受けたのでしょう」  ミカエルには王族としての立ち振る舞いなど、身に付いていない。王妃になったのが昨日だから当然だ。でもその自然体のミカエルの態度がライカンらに好意的に映ったのならば、結果的に良かった。 「ライカンがこちら側についた事は直ぐに魔界へ広まるだろう。ヴァンパイア共がどう動くか。そしてルシファー」  アリソンの青い目が砂漠を見渡していく。  何かを仕掛けてくるのか。それともこのまま雲隠れし続けるのか。四人は各々、暗闇の砂漠を眺めていた──。 「ミカ、おいで」  やっと二人きりとなった部屋。巨大なベッドに優雅に横たわったアリソンが、ミカエルを手招きする。まるで絵画から飛び出したかのような美しさに、ミカエルは一瞬目が眩んだ。  ミカエルは羽があるため、ガウンを肩から羽織る形で不格好になりながら、いそいそとアリソンの元へ歩く。羽を僅かに羽ばたかせ、アリソンの胸元へそっと身を寄せた。  まだルシファーも片付いてないが、ミカエルの心の癒しは愛する夫、アリソンの存在だ。 「今夜はゆっくり出来るんだな?」 「あぁ、昨夜はすまなかった。初日に一人にさせてしまったな。挙げ句にルシファーも現れたりと」  密着するお互いの身体が温かい。トクトクとアリソンの生きる証が心地好くて、ミカエルはこれ以上無理だというくらいにピッタリとくっつく。するとアリソンの身体が僅かに揺れ始める。何だと顔を上げれば、笑っているアリソンがいた。 「なに笑ってんだよ」 「いや、随分と甘えてきて可愛いな」 「だって甘えたい気分だし、いいだろ?」 「もちろん。俺が嬉しいからどんどん甘えてくれ」  アリソンはミカエルの前髪を上げると、額にキスを落とす。次に瞼、頬と顔中にキスをされると、胸が温まり至福を感じることが出来た。  本当は抱いてほしいが、そんな時にルシファーに襲撃されたら、直ぐに対応出来ない。だからお互い口にはしないが、自制している状態だ。  心と身体の飢えがますます募っていく。愛を知ったばかりのミカエルの想いは、一分いや一秒毎に大きくなっていた。今やきっと、ミカエルの想いの方が強いのではないかと思うほどだ。 「アリソン……」 「どうした?」  アリソンの胸元からミカエルが顔を上げると、愛おしそうに見つめてくる青い目があった。

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