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第47話

 毎朝駅の構内で見かけるたびに、いつも目を奪われた。まるで自分でも気づいていなかった気持ちに気づかされるように、いつか自分もこんなデザインがつくれたらと焦がれるような思いで憧れた。  初めて瀬戸のデザインを見たときに、どこか似たものを感じたことを思い出す。あのときはすぐに自分の考えすぎだと否定したが、あれは犬飼の妄想ではなかったのだ。  いまさらながらに、はっと目覚めるような思いにとらわれる。そうか、あれは瀬戸のデザインだったのかと思い知らされる。 「お前さ、何で怒らないの?」 「犬飼さん?」  瀬戸が怪訝な目を向けた。 「おかしいだろ。相手はお前がデザインを盗んだと言ってるんだぞ。お前がデザインしたものなのに。なんでそんな平然とした顔をしているんだよ。ちゃんと怒れよ」  瀬戸を責めても仕方がない。瀬戸はむしろ被害者だ。なのに腹が立って仕方がない。こんな理不尽なことあるかと思うのに、平然とした顔をしている瀬戸が無性に苛立たしい。 「くそ……っ!」  苛立ちが収まらず、犬飼はこぶしを握りしめ、デスクを叩いた。本当はその上司とやらを殴ってやりたい。瀬戸に、お前バカかと怒鳴りつけたかった。胸の中に渦巻く怒りを抑えようと、犬飼は大きく息を吸い込み、そして吐いた。  瀬戸、と犬飼は瀬戸を呼んだ。 「お前はデザインが好きだよ。どうでもいいなんて思っていない。どうでもいいやつがあんなデザインを作れるはずがない。お前も本当はわかっているんじゃないか」

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