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第61話
さすがに呆れて、犬飼は目を丸くした。瀬戸は表情を変えることなく犬飼にキスすると、自分の襟元に指を引っかけ、シャツを脱いでしまう。上半身が露わになった男の引き締まった肉体に、犬飼は思わず目を奪われた。恥ずかしさも忘れ、ついまじまじと見てしまう。そんな自分に気づき、犬飼はじわりと頬を染めた。
あれ、こいつ、いい身体してる……。
なんとなく直視するのが恥ずかしい犬飼を、瀬戸は平然とした顔で見下ろした。
「あんたにとっては何よりも大切な、でしょう?」
そりゃあまあ、それはそうだけど……。
否定もできず、ぽりぽりと頭を掻く犬飼を、瀬戸が何を考えているのかわからないあの瞳でじっと見た。
だってさあ、そんなの比べるものじゃないだろう?
やや劣勢に立たされた犬飼はうろんに目を泳がせる。
でも、それとは関係なくお前のことも本当に好きだぞ。
顔を上げた犬飼の耳に、扉をカリカリと引っかくような小さな爪音が聞こえた。クロだ。いつも夜は一緒に寝ているクロが寝室に入りたがっているのだ。
「瀬戸、クロが……、ひゃあっ」
首筋を舐められ、犬飼は肩を竦める。その間にも瀬戸の手は犬飼の服の裾から滑り込み、最近運動不足を気にしていた腹から胸のあたりを撫でるようにたどっていく。胸の頂を指先でくりくりっと摘まれて、犬飼はわあっと声を上げた。
「わ、おまっ! 何やって、あっ!」
はだけた胸元を瀬戸の唇がねっとりと舐める。瀬戸は犬飼の乳首を唇で挟むと、乳輪のあたりを円を描くように丁寧に愛撫した。
犬飼はそわそわと腰を揺らした。なんだか瀬戸に胸元を弄られていると、身体の奥からおかしな感覚がわき上がってくる。しかも、瀬戸はわざと刺激してほしい部分を放置する。弄られなかった乳首はぷっくりと立ち上がり、触れられるのをいまかいまかと待っている。
「じ、じらすな……っ!」
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