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第14話
ある日の日曜日、俺とナカノさんは2人で旅行でも行こうか、と雑誌を見ながら話してた。
ナカノさんに拾われ、半年が経っていた。
突然、インターフォンが鳴った。
「はい。...どちら様ですか?」
誰かな、と思いながら、ここも自然が豊かでいいなあ、と雑誌に視線を落としていると、
「クロちゃん?まあ、すっかり見違えたわあ」
あの日、クッキーをくれたおばあさんだった。
(クッキーを食べれば猫に戻れる...)
以前、ナカノさんが発したセリフが浮かんだ。
「俺、俺は...猫に戻りません!」
咄嗟にそう叫んでた。
「もしかして、この方がクッキーの...?」
「クロちゃんを助けてくださったのね、本当にありがとう、でもね、これは1つの実験だったのよ」
「実験...?」
俺とナカノさんの言葉が見事にハモった。
「もし猫が人間となったら、人間はどうするか、助けるのかどうか、人間になった猫は人間とどう接するのか」
「だから...俺は戻りません!」
「それはね、クロちゃん。あなただけの意見では決められないの、あなたと一生を共に出来るか、したいか、によるものなの」
「それは...」
(確かにそうだ)
「待ってください」
ナカノさん。
「俺、自分はクロがいない生活はもう考えられません、クロがいるから、仕事から帰宅しても電気がついていて、クロが嬉しそうに出迎えてくれて...
だから、頑張れるんです」
「ナカノさん...」
俺たちの気持ちを聞いた、おばあさんはにこやかに、
ずっとその気持ちを忘れないことよ、と去っていった。
あれから2年。
たまにおばあさんが訪ねてくる時がある。
俺は人間になったのだそう。だから、猫の年齢ではもう無い。
今は時折、散歩したり、買い物や映画や人間としてナカノさんの恋人として、楽しい日々を送ってる。
人間ってなんてめんどくせー、なんて、もうさすがに思わない。
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