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第25話

「買い取りだけじゃない、家賃やら食費、相当な金額を使わせてるね...きっと」 セイヤさんと一緒に湯船に浸かっていた。 「気にしなくていいよ、使い道のない金を持て余すより全然いい」 と湯船のお湯を俺にかけた。 「わっ」 「お前の笑顔がもっと見たい」 セイヤさんが微笑んだ。釣られるように俺も笑う。 「セイヤさんが笑えば俺も笑うよっ」 俺もセイヤさんにお湯をかけ、 「やったなー!」 子供に戻ったみたいにお湯の掛け合いをした。 「...本当にありがとう、セイヤさん」 セイヤさんの胸にもたれかかった。 「セイヤでいいよ、カイ」 「でも8つも違うよ?」 「歳は関係ない、ほら上がるぞ」 うん、と一緒に風呂を上がった。 この日、初めて、売春部屋のあのマンションの一室ではなく、セイヤさんに抱かれた。 セイヤさんの香りのする部屋...。 「好きだよ、カイ」 胸がグッと熱くなる。 泣きそうになった。 いや、涙は零れた。 「痛い?」 俺は抱かれながら首を横に何度も振った。 「悲しくなくっても涙が出るんだね」 「嬉し泣きっていうんだよ」 俺の頬に伝う涙を指で掬ってくれた。 セイヤさん...いや、セイヤの背中にしがみついた。 ふと瞼が開いた。 セックスの後、いつの間にか眠っていたみたいだ。 ベッドの中でセイヤがLINEしている背中を見た。 携帯の明かりに照らされる、細身ながら力強く感じる背中。 「セイヤ...?」 「起きちゃったか、カイ」 セイヤが俺の方を向くと困った顔をした。 「どうしたの...?」 「いや...思いがけない展開になってさ」 スマホを近くのテーブルに置くと腕枕してくれた。 「一緒にいるから絶対に幸せとは限らない、わかる?カイ」 「どういう意味?」 うーん、とセイヤが唸った。 「例えば...いや、はっきり言うよ。リョウはお前の父さんが好きなんだってさ」 「...リョウが!?まさか!」 「一緒にいるうちにさ、そうなっちゃったみたい、片思いらしいけどさ...」 俺は愕然とした。 正直、あんな父親だけど、嫌いになれない自分もいるからだ。 「そっか...だったら、父さんの傍にいるのがリョウの幸せ、てことか」 「そうなるな」 しょんぼりしてる俺を抱き寄せ、キスしてくれた。 それからは、俺はセイヤの甲斐甲斐しい妻のように家事をこなした。 セイヤはみんなの勉強を見てあげたり...。 それから2年。 俺は16になった。 みんな高校認定試験で合格し、それぞれの夢を1つのマンションで抱え、仲良く暮らしています。 俺は初めて人を愛すること、セイヤに愛される喜びや幸せを噛み締めてます。

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