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第1話

 ――広大な海の奥深く。  深海と呼ばれるその場所で、俺は他の生物たちとの接触を拒み、生き続ける。  俺は異形の者。  異形の存在。  皆から忌み嫌われ続ける者。  大いなる神であるポセイドンが治めているこの国は、青々とした美しい海が広がり、人間たちはもとより、邪悪な意志を持つ者は手出しできない。  美しい海は彼の手によって治安に守られている。  少なくとも、俺がいるこの深海は別として、だが……。 「ねぇ、クライド、聞いて聞いて? 僕、16歳の誕生日を迎えたんだ!!」  深海と呼ばれるこの地域は、常に静寂が広がり、混沌とした闇に包まれている。  ここにはポセイドンの魔力は届かず、ゆえに、邪悪な心を持つ者がうろついている。    だが、永遠の沈黙も、『彼』がここへ来ると、すぐに消え去ってしまう。  海藻のように深い色をした緑の、艶やかな短い髪に、アクアマリンの大きな目。  それから虹色の鱗を持つ美しい尻尾。  彼はどこからどう見ても、深海に住むような異形の者ではない。  彼はれっきとした、ポセイドンの血筋を引く美しい人魚だ。  それなのに、なぜここへ来るのかというと――言うまでもない。  俺がいるからだ。 「……フラン、いい加減にしろ。ここへは来るなとそう言っているだろう!?」 「わあ、フランそうなの? お誕生日、おめでとうっ!!」  説教をする俺を無視して、彼は腰に手を当て、誕生日を祝ってくれとそう言う。  フランは、いつもこうだ。

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