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第2話
とてつもないマイペースで、自分が決めたルールを破ることはない。
おかげで、彼の周囲では迷惑がかかりっぱなしだろう。
それは見なくともわかる。
……はあ。
俺はひとつ、深いため息をついてから、口をひらいた。
「......おめでとう。それよりフラン、ここは危ないと何度も言っているだろう? またサメに襲われたらどうする?」
――そう。
フランは3ヶ月前、この深海に迷い込み、サメに襲われていた。
危うく殺されそうになるところへ俺が出くわし、サメを撃退した。
それがそもそもの発端だ。
それからというもの、なぜか俺はフランにつきまとわれ、滅多にやって来ない、この深海で人魚を頻繁に見ることとなった。
「危ないから来るな」
何度、そう言ったことか……。
だが、そうはいっても好奇心旺盛な彼はけっして首を縦に振らず、こうして毎日のようにここへやって来る。
「襲われなかったもん。大丈夫だもん。それに、僕に何かあったら、きっとクライドは助けてくれるもん......」
「フラン......。俺は汚れた者だ。お前のように美しくもない。皆も言っているだろう? 俺と会うなと......」
頬をふくらませて拗ねるその姿はとても愛らしい。
彼と同性の俺でもそう思う。
だからこそ、ここには来ない方がいい。
ここは善も悪もない恐ろしい場所だ。
可愛らしい容姿をしたフランは、ここの住人にとっては格好の餌食だ。
美しい人魚を狙う奴も少なくはない。
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