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第3話
「どうして? どうしてクライドまでそんなふうに言うの? クライドはすごく綺麗だよ?
そりゃ、僕たちと違って尻尾の代わりに人間みたいな二本の足があるけれど、でも少しもおかしくない。
すらっとしていて、すごく綺麗......。
――それに前ね、人間の船が難破して、『彫刻の石像』が、僕らの住む場所に落ちてきたんだけど、クライドの肌の色は『彫刻の石像』に似ていて綺麗だ。
あと、かかとまである髪も、深海よりも深い藍色で、目だって金色ですごく綺麗。
あ、このあいだ、人間が使う金貨も見つけたんだけど、その色に似てるかも!!」
フランはそこまで言うと、少し控えめに俺のすぐ目の前までやって来た。
「僕は、クライドの右の傷なんて全然怖くないし、不気味だとも思わない......」
細い腕を伸ばし、右の顔を隠している前髪を掻き分けた。
そこにあるのは、右目から口まで伸びた古い傷跡だ。
これは、俺が幼い頃、両親に捨てられ、サメに襲われた時にできたものだ。
――両親が俺を捨てた理由。
それは、俺の両親はごくごく一般的な人魚だったにもかかわらず、ふたりの間に生まれた俺は二本の足を持つ、人間のような姿だったこと。
そして、魔力を持っていたことだ。
それゆえ、俺は人魚の世界から追い出され、この闇の中に住んでいる。
皆は自分たちとは違う容姿をした俺を恐れ、拒絶する。
そして、この顔の傷......。
これがまた、俺の評判を悪くする。
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