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(08) 美雪 3 堕ちる悦び

閉院時間が過ぎると、スタッフ達は慌ただしく帰り支度を始める。 美雪は、カルテを整理しながらスタッフ達を見送った。 「院長、それではお先に失礼します!」 「はい、疲れ様……」 誰もいないクリニックに静寂が包み込む。 今夜は、例のヌード配信をする日。 美雪は、はやる気持ちを抑えて残務に取り掛かった。 と、その時、一通のメールが届いた。 件名は、『ジャガイモの検査依頼』 美雪は緊張してそのメールを開く。 それは、美雪が手を貸している『双頭の蛇』なる組織からの連絡メールだった。 「そうか、今度は5人か……多いな」 美雪はぽつり呟いた。 メールには農業関連の定型文書が並ぶがこれはフェイク。 内容は、『双頭の蛇』が扱う商品、つまり男の子達の健康チェック。 美雪も詳しくは知らされていないのだが、『双頭の蛇』は、どこかで集められた男の子達を金持ち達に横流しをする人身売買を生業としているのだ。 添付ファイルには、男の子達のスナップ写真が収められている。 美雪はいつになく真剣な面持ちで彼らのプロフィールに目を通した。 『虐待』『放置』の文字に目がいく。 写真を見てみれば、思った通りどの子も虚な目をしている。 美雪は、片肘を付いて呟いた。 「今度こそ……」 と、その時、モニターに映る人影が目に入った。 振り向くと、そこには男の姿。 (な、なんだと? あの男か!?) 一目で分かった。 すぐにあの時の記憶が甦る。 ドクッ、ドクッと早くなる心臓の鼓動。 男は、一歩近づくと美雪の顎をしゃくった。 「なぁ、あんたが、渋谷 美雪(しぶや みゆき)って医師か?」 「な、何者だ……お、お前は……」 動揺を隠しきれない。 何故、あの男がここにいるのか? どうして、自分の名前を知っているのか? 疑問はいろいろある。 しかし、今一番の感心事は、あの男の顔が目の前に迫っているという事実。 すべてを見すかすような鋭い目つき。 瞳の輝き。 吸い込まれるようで、目を逸らすことができない。 その男は続ける。 「俺の名前は、高坂 拓海(たかさか たくみ)。『双頭の蛇』を追っている者だ」 「なっ、双頭の蛇……」 美雪は絶句した。 (『双頭の蛇』の名前を知っているだと!?……そ、そんなばかな) 体中に動揺が広がる。 『双頭の蛇』は極秘中の極秘。 それをこの男が口にしたという事は、組織に何らかの危機が迫っている事を意味する。 恐怖で汗が吹き出す。そして、焦り。 美雪は平静を装い答えた。 「……な、なんだそれは……聞いた事がないな」 「とぼけるなって。そのメール。それは違うのか?」 美雪は、ハッとした。 慌てて、マウスを操作してメールを閉じた。 しかし、後の祭り。 拓海は、にやっとして美雪を見下ろした。 美雪は項垂れた。 拓海と名乗った男は、既に調査済みなのだろう。 顔色を一つ変える事無く、質問を続ける。 「あんたは、その中で『検査』ってのを担当している。ちがうか?」 「し、知らない。け、警察を呼ぶぞ!」 「ふふふ。いいぜ……ほら、呼んでみろよ!」 美雪の苦しまぐれの張ったりなど無意味。 冷たい視線で見下ろす拓海。 美雪は、ここまでか、と観念した。 「くそっ……一体何が望みだ」 「お前の知っている事を全部吐け。すべてをだ」 「……な、そんな事できるか……」 「じゃあ、体に聞いてみるまでだ!」 強烈な胸部への衝撃。 そして痛み。 しかし、それはスッと消えた。 なぜなら、美雪はそれから直ぐに気を意識を失ったからだ。 **** 美雪は咳き込みながら目を覚ました。 ぼやける(まなこ)で目の前の男を捉える。 美雪の顔を拓海が覗き込んでいた。 (あれは、夢では無かったのか……確か……拓海といったな……な、なに!?) その時、体の自由が奪われていることにようやく気付いた。 裸にさせられ、内診台に手足を固定されている。 体はリクライニングにされ、足は見事に開かれている。 「く、なにをする!」 美雪がそう言うより早く、拓海は言った。 「驚いたぜ。お前の格好。お前は相当なド変態だな。自縛とはな……」 拓海は、美雪の体に張り巡されたロープを撫でながら言った。 「汚らわしい、触るな! 拘束を解け!」 美雪は喚き散らかす。 拓海は無視して言った。 「なんだ、お前、興奮しているのか? 勃起しているじゃないか。口では強がりを言っているようだが、体は正直だな。ふふふ」 実際、美雪の体はこの状況下で性的な興奮を覚えていた。 だから、ペニスは見事に勃起していたのだ。 拓海はそれを目ざとく見つけると、乱暴に嬲りながら罵った。 「な、な、ふざけるな! 私の体は何万もの男達が求める体。お前如きが私の体をどうこうできるなんて思うなよ!」 美雪は怒り心頭して怒鳴った。 体が勝手に反応してしまったとはいえ、頭の中では下に見ている相手に小馬鹿にされたのだ。 美雪は、プライドを大いに傷つけられ猛烈に憤慨した。 拓海は、薄笑いを浮かべて言った。 「……何万ね……ちょっと顔を見せてみろ……ほう、なるほど、なかなかの美形だな」 拓海は、美雪の顎をギュッと無造作に掴むと自分の方に無理やり向けた。 美雪は、ここぞとばかり、ペッ、と唾を飛ばす。 それは、見事に拓海の頬に掛かった。 拓海は、それを冷静に手のひらで拭うとそのままペロリと舐めた。 「いいねぇ。しかし、その抵抗もいつまでつづくかな?」 ぞっとするような不敵な笑み。 美雪は恐怖を覚えて怯んだ。 拓海は、直ぐに美雪の唇に吸い付いた。 「んっ……んんん……」 口の中を舌が掻き回す。 苦しくて息が出来ない。 口の中が無理やり犯されている感覚。 それは、美雪にとって屈辱に他ならない。 美雪は、顔を背けてなんとか逃れた。 「ぷはっ………汚らわしい! や、やめろ! いいか、外道め! 私は絶対にしゃべらない。何をされてもだ」 「そうか、口は固いか……でも、こっちの口は緩そうだぞ」 拓海は、おもむろに美雪の股に手をやると、アナルプラグをヌルっと抜いた。 すると、美雪のアナルは、ぱっくりと口を開けた。 「ヒクヒクしていやらしいアナルだ……男が欲しくて我慢できないか? しょうがない、挿れてやるよ」 「……お前、まさか……や、やめろ!」 拓海は構わずに、そそり勃つペニスを美雪のアナルに当てがった。 「さてと、どんな味かな? おっと、このアナル、俺のを咥えようと自分からくるぞ……ドエロいな……焦るなって、今挿れてやる」 「や、やめろ!!」 拓海は煽りながら、脚の根元を両手で抑え込み、腰を突きだした。 メリメリと拓海の巨根が美雪に体内に飲み込まれていく。 「はうぁっ……うっ、うう……」 美雪は痛みにのけ反りながら喘ぐ。 涎が滴り落ち、白目を向いた。 拓海の熱くて固いものは、思いのほか太く大きく、下腹部を圧迫した。 しかし、美雪の体は正直なもので、気持ちよくして貰おうと、男のものを包み込むように締め付け始める。 「くぅーっ、いいアナルしているじゃないか……締め付けて来やがる」 (くそ、くそ……私の中に入っていいのは、父さんだけだ! こんなクソ野郎に!) 美雪は涙をぐんだ。 そう言っても、体から伝わる抗えない快感。 久しぶりに味わう男同士のセックス。 それは、美雪にとって堪らない甘い密の味。 今の美雪には、うっ、うっ、っと悔し涙を流すことしか出来ない。 拓海は、ピストンをしながら美雪のアナルの中で暴れる。 それは、あたかも美雪の性感帯を探るような動き。 いつしか、美雪は、あっ、あっ、と拓海の動きに合わせて喘ぎ声を漏らすようになっていた。 拓海は、美雪の耳元で囁いた。 「ビクビクしているじゃないか? ほら、気持ちいいんだろ?」 美雪は、はっとして目を見開く。 「き、気持ちいいかだと! く、悔しいが認めてやる……お前のペニスは想像以上なのは確かだ……だが、それがどうした? お前ごとき、そこらにいる男どもなんら変わりはしない!」 美雪は、そうは言ったが強がり。 体のほうは、直ぐにメスイキが始まった。 下腹部が熱くなり、小さな痙攣が淀みなく続く。 ビクっ、ビクっと時より大きな痙攣。 必死に抵抗するが、緊張の糸が解ける。 (く、くそ……私は……なんで、こんな奴に……あっ、ああ……) ドクン……。 美雪は視界が真っ白になり、一瞬意識が飛ぶ。 そして、戻って来た時には回りの景色はいっそ鮮明になって見え、再び下腹部に熱いものが溜まり始めた。 拓海は、ピストンを続けながら言った。 「いったか……体は素直じゃないか……どうだ、話す気になったか?」 美雪は、プイっと顔を横に逸らした。 悔しさで真っ赤になる。 同時に、いった火照りで体が芯から熱い。 そして、次の波がまた迫っているの感じて唇をギュッと噛んだ。 (くっ……悔しい……こんな何処の馬の骨とも分からない奴にイカされて……どうしてしまったんだ、私は……)  悔し涙がにじり出てくる。 ゆっさ、ゆっさ、と続けられる腰の動き。 拓海は、意地悪そうな顔つきで言った。 「さぁ、本番はこれからだぞ? さぁ、いつまで耐えられるかな?」 「や、やめろ! やめろ! ……や、やめてくれ……」 体を左右にブンブンと揺らし拒否する。 手足は拘束具によって締め付けられている為、それは明らかに無駄な抵抗。 「……やめてくれ……」 そう懇願し繰り返す言葉は、最後はフェードアウトした。 あっ、あっ、と快楽に溺れる喘ぎ声に消されてしまったのだ……。 **** もう、何度メスイキを繰り返しただろうか? 拓海は止めどなく腰の振りを続ける。 すでに美雪の体もそれに合わせて腰を振り、自ら気持のいい所へ迎え入れようと男根を誘う。 リンクして動く一つの塊。 もうろうとする意識の中で、美雪は残された理性で必死に抵抗を続けていた。 (わ、私は崇められる存在……何万の男達が私を欲して……)  しかし、度重なるメスイキの絶頂の度に頭の中は快楽でいっぱいとなり、抵抗する気力が徐々に失われていった。 (……だ、だめだ。もう、何も考えられない……体が勝手に……気が遠くなる……意識が飛ぶ……) ふわふわとした浮遊感が美雪を襲った。 これが、天にも昇る気持ち、というやつなのか? と美雪はぼんやりと考えた。 そこで、再びメスイキ。 美雪は、ふと、女のような艶っぽい声で絶頂を叫んでいることに気が付いた。 恥ずかしいし、悔しい……でも、それはもう、どうでもいい……。 拓海が言った。 「また、いったな……何度目のメスイキだ……なぁ、そろそろ、根を上げたらどうだ?」 遠いところで拓海の声が聞こえた。 「しょうがない、飛び切りデカいの、いくぞ!」 間もなく、ぐっと両手で腰を捕まれたかと思うと、「おら!!」という拓海の雄たけびが聞こえた。 同時に、今までないほどの突き上げが、美雪の全身を襲う。 ぷつん……。 耐えていた最後の糸が切れた。 心と体のリミッターが解放される……。 すると絶頂の爆発が巻き起こった。 「あっ、ああ、はうぁああ……」 (……堕ちていく……) 美雪は、再び気を失った。 **** 「目が覚めたか?」 美雪は、目を開けた。 そこには天井が見えた。 状況を確認すると、すべての拘束ははずされ、診察ベッドに寝かされていた。 美雪が自分の手首を確認していると、ベッドの縁に座っていた拓海が言った。 「ここまで口が固いとはな……そこまで男を通すというのならそれもいいだろう、別を当たるとする……」 美雪は半身を起こし、ふと拓海を見た。 下半身を見ると、まだ隆々と勃起している。 美雪は、ゴクリと唾を飲み込んだ。 (ほ、ほしい……) 拓海は言った。 「という訳だ、じゃあな……」 「待て! 全て吐く 洗いざらい吐く!」 美雪は叫んだ。 そして、立ち上がろうとした拓海の手首を握った。 「ん? どういう風の吹き回しだ?」 「すべて吐く、だから……お、お前のそれをもう一度……」 美雪は涎が出てくるのを必死に我慢して言った。 拓海は、口元をほころばせた。 **** 美雪は床にペタリ座りをしている。 それは、幼い女児特有の座り方。 男がすると、その骨格から脚が窮屈に曲がってしまい、その苦しさは拷問に近い。 しかも、裸の美雪にとっては、男の柔らかい部分が汚く冷たい床に押し付けられ、これ以上はないという程の屈辱の体勢。 それでも、美雪は嬉しそうに笑みを浮かべた。 (拓海様……そんな目で私を見ないでください……感じてしまいます) 目を潤ませて喜びを表現する。 拓海は、美雪に首に取り付けた特製チョーカーの鎖を引っ張って、命令した。 「美雪、まずは、お前自身の事を話してもらおうか?」 「はい!」 美雪は、いい返事で即答し、自分の半生を語りだした。 **** さて、そうなる数分前の事。 美雪は、すっかり拓海に心酔してしまったことを告白した。 拓海という男の大きさを持ってすれば、自分などは欠片程も無い小さい存在。 それをつくづく思い知ったのだ。 なんの事はない。 美雪のようなプライドの高い男こそ、一旦負けを認めた相手にはつくづく惚れこんでしまう。 それは、かつて彼にとっての養父がそうであったかのように。 拓海は言った。 「ペットにして欲しいだと?」 「はい!」 美雪は目を輝かして答える。 「言い方に気を付けろ。ペットにして下さい、拓海様だ」 「え」 「え……じゃない、美雪! お前、何様のつもりだ? お前には徹底的に躾がいるな」 「は、はい! 拓海様、どうか私を……思う存分、調教してください!」 美雪は、今までないほど、血色がよく艶やかな顔で答えていた。 **** 美雪は、自分の生い立ちから、養父の事、そして医師として成功してきた履歴を、それこそ包み隠さず告白した。 拓海は頷いた。 「……なるほど、俺が一通り調べた内容と符合するな。嘘じゃなさそうだ」 拓海がそう言うと、美雪は顎を上げて、どうだと得意気な顔をした。 「よし、褒美をやろう」 拓海はそう言うと、突然、勃起した美雪のペニスを床に踏みつけた。 美雪は、その痛さに悲鳴を上げた。 「あ、あううっ……や、やめてください……拓海様……」 拓海は、ゴリゴリと擦るようにペニスを踏みつける。 只でさえ、興奮してパンパンになっていた美雪のペニス。 それが今は、拓海の靴の下で可哀そうなくらい潰れて真っ赤に充血した。 「……ひっ、あぁううう……痛い……痛いです……拓海様……」 涙ながらに懇願する。 拓海は、構わずに言った。 「次は、『双頭の蛇』について話してみろ。ちゃんと話したら離してやる」 「うぐっ……うう……はい、分かりました……」 美雪は、涙を堪えながら、やっとそう答える事が出来た。 「『双頭の蛇』は……」 美雪は、話しながら奇妙な感覚に襲われていた。 ペニスを足で踏まれ、潰され、それは痛みを伴う拷問に等しい屈辱。 しかし、それがいつしか脳内で快感物質に変換されて全身に行き渡っていく。 拷問と思えたそれは、今では愛撫という形に姿を変えていた。 美雪は、話しをするうちに、話し終えるのが惜しいとさえ思うようになっていた。 「……はぁ、はぁ……と、いう訳です……拓海様」 美雪は、話し終えて拓海を見上げた。 もう少し、踏みつけていてほしい。 そんな無言のおねだりが表情に現れている。 拓海は言った。 「よく話してくれたな、美雪。では、ご褒美だ」 拓海はそう言うと、足を離した。 と、思った瞬間…… 逆に、ムギュっと思いっきり足を踏み付け、ペニスを潰した。 「ひああぁぁっ……」 ドピュ、ドピュピュピュ……。 美雪の絶頂の悲鳴と共に、ペニスの先からは白い液が飛び散っていく。 それは、キラキラ光るダイヤモンドダストのように、辺り一面を白い世界に変えた。 美雪は、絶頂の悦びの中で思った。 (やっぱり、拓海様は私のご主人様たるお方……拓海様……) そして、美雪はさり気無く拓海の下半身目掛けてなだれ込んだ。

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