49 / 56
リップクリームチャレンジ2
「俺は普段スーツを着てるし、大抵のお客様は妻帯者で年配の方が多いから、和臣が心配する必要性はありません!」
とどめとばかりに和臣の頬にキスをして、大好きなことをアピールした榊の気持ちは、ちゃんと伝わっているらしく、和臣も榊の頬にキスをした。
「心配するに決まってるのに。だって恭ちゃん格好いいんだからさ」
和臣は言いながら、さっき自分が叩いた榊の手を取り、赤くなっている甲を優しく撫で擦る。
「和臣が企画したコレは、心配性が吹き飛ぶなにかがあるっていうのか?」
「吹き飛ぶ吹き飛ぶ! だから強制参加だからね」
「そのかわいい唇に塗ったリップクリームの種類を、俺が当てるゲームだっけ……」
手に取ることも許されないそれを、榊はぼんやりと眺めた。リップクリームのケースの色を見ても、どんな種類なのか、男の榊はまったく想像すらできない。
「まずは、すぐにわかりそうなものから塗ってみるね」
一番左端にある真っ赤なケースのリップクリームを手に取った和臣は、ニコニコしながらそれを塗ったくった。リビングの照明の下で和臣の唇が光り輝き、色っぽさに磨きがかかる様子を目の当たりにして、榊の気持ちが落ち着かなくなる。
「恭ちゃん、ほらほら躊躇しないで、キスして確かめて」
「あ、うん……」
和臣の唇に触れそうになった瞬間、ふわりとリップクリームの香りが鼻についた。それを確かめるように、唇を重ねる。
「んんっ……」
榊の首に和臣の両腕がかけられたせいで、さらに唇の密着度があがる。
「和臣の唇、おいしい」
種類を言わずに率直な感想を告げた榊は、ふたたびくちづけをしようと顔を傾けた刹那、首にかかっている和臣の腕が外され、それを拒んだ。
「恭ちゃん、おいしいじゃなくて、何味なのか当ててくれなきゃゲームにならないよ」
突き出た唇が不機嫌を表しているのを見て、榊は慌てて姿勢を正して答える。
「イチゴ、ストロベリーって答えた方が正解?」
「当たり! それじゃあ次、いってみよう!」
ティッシュで唇を拭い、しっかりイチゴ味を消してから、黄色のケースを手に取る。
(黄色関連の食べ物で代表的な物はレモンが一番で、バナナやパイナップルも香料がありそうだな)
顎に手を当てながら思考する榊を他所に、和臣はさっきと同様にリップクリームを唇に塗りたくった。
「恭ちゃん、準備OKだよ」
目を閉じた和臣が、考え込む榊に顔を突き出す。てかてかに光る唇を見ながらやんわりと頬を包み込み、顔に角度をつけて、ゆっくり自身の唇を押し当てた。
「!!」
榊が予想していたものではないその香料に驚き、すぐに唇を解放してしまった。
ともだちにシェアしよう!