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リップクリームチャレンジ2

「俺は普段スーツを着てるし、大抵のお客様は妻帯者で年配の方が多いから、和臣が心配する必要性はありません!」  とどめとばかりに和臣の頬にキスをして、大好きなことをアピールした榊の気持ちは、ちゃんと伝わっているらしく、和臣も榊の頬にキスをした。 「心配するに決まってるのに。だって恭ちゃん格好いいんだからさ」  和臣は言いながら、さっき自分が叩いた榊の手を取り、赤くなっている甲を優しく撫で擦る。 「和臣が企画したコレは、心配性が吹き飛ぶなにかがあるっていうのか?」 「吹き飛ぶ吹き飛ぶ! だから強制参加だからね」 「そのかわいい唇に塗ったリップクリームの種類を、俺が当てるゲームだっけ……」  手に取ることも許されないそれを、榊はぼんやりと眺めた。リップクリームのケースの色を見ても、どんな種類なのか、男の榊はまったく想像すらできない。 「まずは、すぐにわかりそうなものから塗ってみるね」  一番左端にある真っ赤なケースのリップクリームを手に取った和臣は、ニコニコしながらそれを塗ったくった。リビングの照明の下で和臣の唇が光り輝き、色っぽさに磨きがかかる様子を目の当たりにして、榊の気持ちが落ち着かなくなる。 「恭ちゃん、ほらほら躊躇しないで、キスして確かめて」 「あ、うん……」  和臣の唇に触れそうになった瞬間、ふわりとリップクリームの香りが鼻についた。それを確かめるように、唇を重ねる。 「んんっ……」  榊の首に和臣の両腕がかけられたせいで、さらに唇の密着度があがる。 「和臣の唇、おいしい」  種類を言わずに率直な感想を告げた榊は、ふたたびくちづけをしようと顔を傾けた刹那、首にかかっている和臣の腕が外され、それを拒んだ。 「恭ちゃん、おいしいじゃなくて、何味なのか当ててくれなきゃゲームにならないよ」  突き出た唇が不機嫌を表しているのを見て、榊は慌てて姿勢を正して答える。 「イチゴ、ストロベリーって答えた方が正解?」 「当たり! それじゃあ次、いってみよう!」  ティッシュで唇を拭い、しっかりイチゴ味を消してから、黄色のケースを手に取る。 (黄色関連の食べ物で代表的な物はレモンが一番で、バナナやパイナップルも香料がありそうだな)  顎に手を当てながら思考する榊を他所に、和臣はさっきと同様にリップクリームを唇に塗りたくった。 「恭ちゃん、準備OKだよ」  目を閉じた和臣が、考え込む榊に顔を突き出す。てかてかに光る唇を見ながらやんわりと頬を包み込み、顔に角度をつけて、ゆっくり自身の唇を押し当てた。 「!!」  榊が予想していたものではないその香料に驚き、すぐに唇を解放してしまった。

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