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第20話

「『物語』っていうけど、実際、やってるのは気に入った女の子と仲良くなって、いい感じになって終わるだけなんだよね」  多米杏一はたわいもないゲームの感想を、友人ではなく、小さなゲーム屋・尾場ゲームショップ(略してOGS)の店員にして店長の尾場としている。  おばといっても、女性ではなく、ゲーム好きが高じて半ば趣味で営業しているような中年間際のおじさんだ。  そして、多米は名前に違い、パン党の大学生兼ゲームおたくだ。 「そうそう。まぁ、別に否定はしないけど、もっと重厚感のあるヤツだと思うじゃん」 「まぁね」  尾場は多米を宥めるように口にすると、ココアの入った可愛らしいクマのマグカップを多米に手渡している。  客は多米が来る以外は常連の客が何人か来るぐらいで、店員や客がココアを飲んでいても、とやかく言う者は1人としていないのだろう。  そんな緩やかでまったりとした空間に、津麦はカランと音を立てて、ドアを開く。 「(また始まる。あの3年間が今日から……嬉しいけど、時間も多米との関係も進まない3年間が……)」 『世界の時間が巻き戻っても、俺はびーさんと出会いたい』  津麦はドアを押しながら、多米の言葉を思い出すと、また多米に出会うべく尾場や多米達の方に足を進める。 「(進まない、じゃない。進めなきゃいけない……俺はびーさんに好きになって欲しいんだから)」  実況者'S LOVE  No.? SPECIAL END 世界に連れ戻されたタイムトラベラー

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