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第10話 2人のカタチ【最終回】
「うわ……なんだこれ。つうか、なんでそんなの持ってるんだよ!」
蒼空が、手にローションをつけて、後孔 にヌチャチャと塗りたくり、恍惚 としていた。
「この日の為に?」
「んな、バカな!」
誰も立ち入ったことのない、そこは、キュッと結んで侵入者を拒んでいた。
「夕輝、力、抜けよ」
「力抜けって、無理だろ…………ぁ……ああ!」
蒼空の長い指で、ゆっくりと、探るようにこじ開けられる。
「ひゃぁ……」
「痛いか?」
痛くない。
むしろ……
そんな事、口には出来ず、夕輝は、ふるふる、と首を振った。
体内を探る指が、腹の内側を擦ると、夕輝の口から嬌声 が飛び出た。
「ああぁ! やめっ! そこ……や」
ゆっくりと、開かずの扉が開いていく。
指は2本に増えて、かき回される。
集まってくる血液で、夕輝は疼いて仕方なかった。
「も……や、やだ」
切なくて仕方ない。
「気持ち良くない?」
夕輝が首を、ぶんぶんと振り回した。
「はや……く」
赤く熱 り勃った、ソレで突いて欲しい……
「いれるぞ?」
涙を溜めた目で蒼空に訴えると、察したのか、指が抜かれ、代わりに、比べ物にならないほど、太くて、硬いものがゆっくりと沈められた。
「あぁ……ぁ……ん……ん、蒼空」
「……っ……う……きつ……はぁ」
最奥まで達すると、蒼空は、夕輝に覆いかぶさり、唇を合わせながら、甘い律動が繰り返される。
「夕輝……は……ぁ」
熱い吐息が、耳にかかり、普段、排泄のために使われるそこを、キュッと締め上げた。
「おま……締めすぎ……っ」
「ぁ……んっ……んっ……んっ」
だんだんと律動は、速く、奥へ、奥へと夕輝を穿つ。
しっとりとした肌の感触。
甘い息づかいと、2人が繋がっている音だけが聞こえる。
「ぁぁ……気持ち……いい。蒼空……」
「夕輝……」
悩ましげに、悶える夕輝を見下ろして、鞘に出し入れしている剣の質量が増す。
俺は、ずっと。
たぶん、夕輝が忘れる前から、心のどこかでこうする事を望んでいたんだろう、と蒼空は思っていた。
「はぁっ……すごっ……おっきい。ダメっ……もう」
「俺も…………達 く」
一番深いところを突かれ、夕輝がビクビクと痙攣を起こすと、中の肉棒が、ドクドクと脈打った。
「あぁ! あぁぁっ!」
「……っ……はっ! ぅぅ!」
白く、頭が白く弾ける。
今果てたばかりなのに、蒼空の愛棒はまた、硬く大きくなっていた。
「あぁ……も……ムリ……ぁぁ!」
「うん、一回じゃ……満足しないよな……は……ぁ……」
「ちがっ……ぁぁっ……ぁぁっ……」
律動は再開され、言いたかった言葉は快楽にのまれ、溺れていく。
「あぁっ……いい、気持ちいいよぉ……あぁ……あぁ……んん」
溶ける。溶ける……
結局その後も、もう一回することになり、行為の終わりを迎えたときには、2人とも気を失うように眠りに落ちていた。
※
(なんだこれ……腰が痛ぇ。足もガクガクするし)
翌日、夕輝は、とても、出かけられる状態じゃなかった。
その次の日。
2人は、春祭りに出かけた。
昔の様に店を周り、懐かしい顔に会った。
「きっと今、満開なんだろうな」
夕輝は、森を眺め、立ち止まっていた。
「だからって、もう、森に入ったりするなよ」
「迷信だと思ってたのになぁ。なぁ、お前っていつから俺のこと好きだったんだ?」
「……ここで、お前を見つけた時に気づいた」
「へ? お前、あん時そんな事思ってたわけ? ビビるんだけど」
夕輝の頭に、ポカっ、と拳骨をくらわせた。
「俺のこと散々惑わせといて、何言ってやがる」
「あーごめんて。でも、正直、旅館継がないなんて事になってると思わなかったわ。よく許してもらったな」
「弟にだけ……本当の事、打ち明けたんだよ。そしたら、『俺が代わりに継ぐ』って言ってくれて。それより、なんでまた、H検?」
「本当はさ、中小企業診断士の資格、取ろうと思ったんだ」
少し、恥ずかしげに、夕輝は顔を背けた。
「それ、お前じゃ無理じゃね?」
「分かってるよ! 難しいし、合わないと思った。だけどさ、ホテルの接客のバイトする事になって、それが楽しくて。お前の事、助けてやれるかなって思った」
蒼空は、胸がいっぱいになり、夕輝の手を握りしめ、顔を近づけた。
「あっ! でも、TOEICとサービス検定はあるから」
顔を赤らめて逸らす、夕輝の目が泳いでいる。
「取ったのかよ」
「出来れば、あと、H検と実務技能検定を取ろうかと思ってて」
「じゃ、俺も取るか、診断士の資格」
「うわ、お前やな奴だな」
夕輝の顔に手を添えて、耳朶 を指で揉んだ。
「冗談だよ。楽しみにしてる」
「あ、うん。ってお前の近いって……ンッ」
軽めのキスを交わした後、2人は帰り、翌日、夕輝はまた、東京に帰って行った。
※
一年後。
夕輝は、2人で暮らすマンションで、荷解きをしていた。
今日から、ここに、蒼空と住み、来週から旅館で働く事になっている。
それは、去年、蒼空に頼んだ事だった。
「終わったのか? どうした?」
蒼空が顔を出す。
夕輝は、ぼんやりと、棚を眺めていた。
「そっか。オレ達、大人になったんだな」
高校生とは違い、悩みを解決する力がある。
なにより、自分で考え、選んだ道は、こんなにも輝いて、愛おしい。
稼げるようになった。
親から離れても、生活ができるようになった。
「当たり前だろ。もう、おじさん、まっしぐらだぞ」
「あはは、やだな。それ」
蒼空が抱きついてくる。
カタン……
首にかかるネックレスが揺れ、飾っていた写真が落ちた。
「いきなりやめろよなぁ」
床に落ちてしまった写真立てを拾って、蒼空がもとに戻す。
2人が笑い合う声が、部屋に響いた。
つい最近撮った2人の写真の横には、まだ高校生だった頃の2人の写真が並べられて、2つとも、幸せそうに……
心を寄せ合うように
笑っていた。
完
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