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第9話 通じあう想い
蒼空の家に連れてくる頃には、夕輝も少し酒が抜けてきていた。
「なぁ、怒ってるのか?」
さっきから、蒼空入って黙ったままだった。
「怒ってない」
その割には、眉間に皺を寄せて、我慢しているように見えた。
「1人で歩けるから、離せよ」
「やだ……」
街灯がぼんやり滲んで、はらはらと落ちてくる桜の花びらに降られながら、2人は蒼空の家に着く。
支えがある安心感で、夕輝は、もう、ウトウトとしていた。
「蒼空。帰ったの? まぁっ! そんなに飲ませて」
「ほっとけよ。少し寝かせるから」
離れに行く2人の後ろ姿に、母親が生暖かい目を向けていた。
『久しぶりだから、仕方ないわよね』
そんな声が聞こえてきそうだった。
「なぁ……」
「起きたのか? お前ん家連絡しとくから、泊まってけよ」
「あぁ……うん。でも、よかったのか? 世砂ほっといて帰ってきて」
「何言ってんだ? お前」
ベッドに座らせようと、肩にかけていた腕をゆっくり外していく。
「だって、大事な人って世砂なんだろ?」
その言葉を聞いて、今まで我慢していた気持ちが、怒涛のごとく押し寄せ、緒をブチ切った。
「ちょっ!」
手首を掴んで、体を押さえつけると、唇に食らいつく。
ジタバタと抵抗する夕輝を、そのまま押し倒そうとして、腹に蹴りを入れられた。
「うっ……てぇ!」
びっくりしている目は、蒼空の下半身に向けられていた。
(逃がさない!)
逃げ出した夕輝を壁に押し付け、抵抗をしているのもお構いなしに、服を捲し上げて、背中を舐め上げる。
「お……い……んっ!」
手を這わせて、胸にある突起を指でコリコリと擦ると、湯上がりのような熱い肌を震わせ、官能的な匂いが漂った。
「あ……ぁぁ!」
蒼空は、ずるずると床にへたり込んだ彼のズボンに手を入れ、孕 み始めた彼の熱が増すように、執拗に責め立て始めた。
※
結局、気持ちを制することが出来ず、襲うような事をしてしまった。
頂天に達した夕輝をベッドに寝かすと、蒼空は壁に寄りかかって、ズボンの下で、まだ硬く、熱を持つ欲の塊を取り出して、己で握った。
苦しい……
「は……ぁ……」
夕輝の喘いでいた姿、声。
思い浮かべて、目の前に眠る彼と重ねる。
苦しい……
「はぁ……はぁ……」
手についていた甘い白液が、自分のものと混ざり合い、ぬかるみに足を突っ込んだ様な音が、脳をくすぐる。
蒼空は目をつぶっていた。
早く!
早く吐き出したい。
「蒼空?」
「!!」
思わぬ声に、蒼空は動かしていた手を止め、夕輝がとる反応を待つしかなかった。
「蒼空。苦しいのか?」
夕輝は、臆することもなく、蒼空の前に膝をつくと、聳 り立つ欲棒 に手をかけながら、唇に吸いついてきた。
「夕輝? お前まさか……」
熱い吐息。
熱に浮かされた様な、前に向けられたことのある、艶やかな視線の端が、涙で濡れていく。
「お前じゃなくて。俺が、お前の事を好きだったんだな」
「思い出したのか?」
ははっ、と蒼空は自嘲したように笑った。
「違う、俺はもう、好きなんじゃなくて、愛してるんだ」
「蒼空……ン」
お互いのすれ違っていた時を埋めるように、唇を合わせ、犯すように口内に舌を這わせる。
「夕輝……は……っ!」
手の動きも加わって、蒼空はもう……限界だった。
「うぅ……あぁ!」
どろどろとした熱 液が弾け飛んだ。
でもそれは、今まで蓄えた欲望でしかなかった。
息が整うのを待たずに、夕輝をベッドに連れて行くと、ペチャペチャと、わざと音を立てて、身体中を貪り始めた。
「ん……お前。元気すぎだろ」
さっき吐き出したばかりの蒼空の分身は、お前をよこせ、と言わんばかりに反り返る。
夕輝には、凶器を向けられているように見えた。
「なぁ、受け入れてくれるだろ?」
「俺、初めてなんだけど……」
「大丈夫、優しくする」
「ああ! おい!」
「駄目なのかよ? なぁいいだろ?」
「…………」
駄目じゃない。
明らかにおかしいはずなのに、夕輝は嫌じゃなかった。
コクン。
夕輝は、不安と、期待の表情を浮かべ、小さく頷いた。
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