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第5話

「ねえ、あれ見てよ、広斗さん、めっちゃ可愛くない?」 動物の番組を指差し屈託のない笑みを浮かべる慶太をテーブルで頬杖をついて眺める。 はっきり言って調子が狂う。 「犬や猫とか飼わないの?あ、もしかしてペット不可?このマンション」 「いや、大丈夫だけど。てかお前、宿題は」 「見る?」 胡座をかいたまま、慶太が振り返る。 慶太がボストンバッグから宿題のプリントの山を取り出した。 全て終わらせていた。 まだ夏休みは入って間もない。 「もう終わらせたのか頭いいんだな、お前」 「面倒なことは先に済ませてた方が楽だから」 俺の隣で頬杖ついて見上げ、 子供らしい無邪気な笑顔を浮かべた。 「どこ行く?」 「どこって?」 「水族館、遊園地、花火大会、プール。あ、海もいいね!」 慶太が指折り数える。 次の日。 俺と慶太は慶太の誘いで海に行く為に水着を買いに行った。 一応、慶太もお金は持って来たらしいが俺が払ってあげた。 レジの最中、慶太は領収書を、と店員に頼んでいた。 「また親父の権力か」 「まあね、お世話になってるんだし」 慶太が立ち止まった。 ペットショップだ。 犬や猫、うさぎ。 ガラスに慶太が張り付いた。 「なんだ、欲しいのか」 「可哀想。可哀想だよね、こんな狭い箱にみんな入れられて。俺が金持ちだったらペットショップごと買って可愛がるのに。命に値段つけるなんてナンセンスだよ」 「お前の親父の権力ならなんとかなるんじゃ」 慶太が振り返り俺を見る。 強い眼差しだった。 「親父の権力はこのことには使いたくない」 歩きながら、慶太の野望を聞いた。 「いつかペットショップを無くしたい。殺処分もさ、無くしたい。でもどうしたらいいかわからないんだ」 「動物、好きなんだな」 「うん。実家にもいるよ。犬が2匹と猫が3匹。全部、動物愛護センターで貰った子なんだ。親はペットショップで買いなさい、て言ったけど。どちらで貰おうが関係ないよね」 「そうだな。若いのに偉いな」 慶太が頬を膨らませた。 「それやめて。葬儀の日も子供だとか若いとか。広斗さんも充分若いじゃん」 「俺、24だよ?お前は10代だし」 「俺もいつか24になるよ、変わらない」 突然、慶太が俺のTシャツの裾を引っ張った。 「タピオカ飲みたい」 「タピオカ?」 初めてタピオカを飲んだ。 「不思議な飲み物だな...スイーツになるのか...?」 しばらくタピオカの入ったカップを眺めた。 「もしかして飲んだ事ないの?」 バカにされる、と思いきや、 「俺も」 と笑い、タピオカを啜った。

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