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第4話

「へえ...お洒落なマンション、綺麗にしてるんだね」 1LDKの殺風景な俺の部屋。 ウロウロ慶太が見て回る。 俺は好きにさせた。 両親も亡くなり今更だ。 ふと、 「これ、なに?」 2日前、セフレと使ったオレンジ色のキャップのローション。 「なんだろな」 「うわっ、スライムみたい、どろどろしてる」 慶太は手のひらにローションをぶちまけていた。 「なにやってんだ、洗ってこい」 「洗面所、何処」 「奥行って右」 慶太が洗面所に向かい戻って来た。 「なんに使うのあれ」 「さあ、なんだろな。...もしかして童貞?慶太」 うっ、と慶太が言葉に詰まる。 「彼女かー、だからこんなに部屋、片付いてるんだね」 本当は俺が片付けてるんだけど。 「彼女さん来るときは部屋から出ておくから、安心してよ」 「彼女なんていないよ」 「そうなんだ、いそうなのに」 確かに女に告白された事はしばしばある。 だが、物心ついた頃には女子より男子の体に興味を抱いていた。 そして、中1で初恋。 冬休みにむすばれた。 まだ青かった俺は真剣な思いを両親に知って欲しかっただけだ。 が、報われはしなかった。 よいしょ、と慶太は大きなボストンバッグを前に整理し始めた。 「もう11時すぎてるぞ、明日にして、風呂入って寝ろよ」 「じゃ、先シャワー浴びるね」 着替えらしきものを持ち、慶太が浴室に消えた。 布団を用意したが、ダブルベッドだし問題ないよ、と慶太が言い、一緒に眠った。 朝。 俺は朝食の仕度。 「おはよう。広斗さん」 「おはよ。慶太。顔洗ってこいよ」 慶太は歯ブラシセットと共に洗面台。 その間に朝食を作り終えた。 「うわ、うまそー、腹減ったあ」 トースト、ベーコンエッグ、サラダ、ポタージュ。 久しぶりに誰かと朝食を食べた。 「俺、土日以外、仕事だけど、どうすんだ」 「あ、それなら安心して、母さんが広斗さんの会社に話しつけといた」 「話しって?」 「ほら、うちの親父、議員じゃん。なんとでもなるよ」 「どういう意味」 「俺がいる間、休んでいいって。俺の親父の権力使わせて貰ったから」 「はあ?俺の給料は」 「問題ないよ、あ、逆に給与、上がったりしてね」 トースト片手に無邪気に笑った。 「まぢかよ...」 遊びにいけない。 「しばらくお世話になります!」 慶太が頭を下げた。

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