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第21話

次の日。 慶太を連れて、慶太の実家に来た。 慶太も久しぶりの我が家だ。 チャイムを鳴らすと、お母さんがいらっしゃい、と笑顔で出迎えてくれた。 あらかじめ、詳しくは話さなかったけども、慶太は無事見つかったことと、 明日、2人で行きます、と電話を入れていた。 「とりあえず、2人とも座って頂戴」 広いダイニングテーブルに招かれた。 家政婦さんではなく、珍しくお母さんがお茶をいれてくれた。 「そうそう、頂き物のマドレーヌあるけど食べる?お紅茶にきっと合うわ」 すぐに慶太は 「要らない」 と返事した。 お母さんはしんみりとした表情で、紅茶に手は付けず、 「あなたは私を恨んでるでしょうね」 慶太に言ったんだと思う。 「そりゃそうよね...明奈が生まれても亡くなっても母親らしいこと、なに1つしてあげれなかったんだもの...」 「わかってんじゃん」 「慶太」 涼しい顔でティーカップに口をつける慶太を制した。 「お母さんもずっと悩んでいたわ。あの人...お父さんの言いなりになっている自分が嫌でたまらなかった。慶太。慶太と同じようにお母さんは今でも明奈のことを愛しているわ」 「嘘だ!」 「嘘だと思うならそれでいいの。せめて、あなたはあなただけは幸せになって欲しい。あなた達を反対するつもりはお母さんは無いわ」 車の中で外を見る慶太はいつにも増して、真剣な眼差しだ。 途中で俺は花屋に寄った。 ピンク色のガーベラを1本選び、ラッピングしてもらった。 着いた先は慶太の妹、明奈ちゃんの墓だ。 着くと真新しい花束が活けてあった。 「もしかしたら、お母さんかもしれないね」 ガーベラを供えると、慶太はなにも言わず、以前、遊園地で購入した明奈ちゃんへのプレゼント。 うさぎのぬいぐるみの付いたキーホルダーを可愛い包みのまま、そっと墓石に置き、手を合わせ、目を瞑った。 慶太と出逢わせてくれた感謝とこれからも慶太を見守って欲しい、と俺も手を合わせ、瞼を閉じ、祈りを込めた。 目を開けると、慶太はまだ明奈ちゃんに心の声を届けていて、優しく見守った。 慶太は目を開けると笑みを浮かべる。 「手、出して」 右手を差し出すと、違う、左、と言われ、左手を差し出す。 なんだろうと思っていると、薬指にシンプルな指輪を嵌められた。 慶太は自分の左手の甲を見せて微笑む。 ペアリングだった。 「明奈の前でこうしたかったんだ。明奈の分、て変だけど、2人分、幸せになってもいいのかな、て」 高級そうなキラキラした指輪に目を奪われた。 「まさか、この為にバイトしてた...?」 「それもある。親父の金で買いたくは無かったから」 「...なにか食べてく?」 「そうだなあ...オムライス食べたいかも」 「オムライスか、いいね。美味い店、知ってるよ」 「ほんと!?行ってみたい」 まだまだ発展途上な俺たちは少しだけ一歩、前進できたように感じる。

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