7 / 77
第7話
恭一がバイトを終えて自動ドアから出てきた。
「お疲れ様ですー」
グレーのパーカーにデニム。
「あ、あのっ」
リクが声を掛けた。
3人に気づき、恭一が固まった。
じゃんけんで勝った、リクの番からだ。
「これ...」
「ちょっと待って」
ソラが制止した。
「今日、バレンタインなのでみんなそれぞれ、お菓子作りました」
「なんでお前が言う、ソラ」
と、カイ。
「みんな真剣に作りました。僕はお菓子作りが下手くそで、リクとカイが頑張って作りました!2人のチョコ食べてあげてください」
人見知りなソラは顔が真っ赤だ。
「そ、そうなんだ、ありがとう」
ソラの思いがけないセリフにリクとカイが可愛いパッケージの箱を恭一に差し出した。
「受け取ってください!」
しばらく恭一は考えたようだが、両手を使い、同時に2人の箱を受け取った。
「ありがとう」
「ソラは?」
リクが聞くと、
「僕はいいの」
後ろ手に箱を隠した。
「駄目だよ。お前が一番、頑張ったんだから」
リクはソラから箱を奪い、恭一に渡した。
帰宅するとしばらくして、はい、とソラはリクとカイに箱を渡した。
どうやら、リクとカイの分も用意してたようだ。
「美味しくないかもだけど...」
「溶かして固めただけだろ?」
カイが優しい笑顔を浮かべ、
「実は俺も」
と、カイも2人に箱を手渡した。チョコチップの入ったカップケーキだ。
「そうだ、実は俺も」
偶然を装ったようにリクも2人に生チョコの入った箱を手渡した。
「ぼ、僕、飲み物、いれてくる!コーヒー?紅茶?ジュース?」
またもや、真っ赤な顔でソラが立ち上がる。
さぞかし嬉しかったんだろう、少々、興奮気味にも見える。
ともだちにシェアしよう!