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第14話

ソラは真っ先に自分が風邪を引き、2人に移してしまうことがとても嫌だった時期がある。 それに3人は3つ子だと近所では有名で、相手は知っていても、自分は知らない人にまで話しかけられることもある。 人見知りでもあり、どちらもソラには嫌な事だった。 ある日、ソラは雨の中、1人で下校していた。 排水溝から子猫の泣き声がしていて、ソラは立ち止まった。 排水溝に入り込んだ子猫を助けてあげようとソラは傘を投げ捨て、救助に当たっていたが、コンクリートの蓋があまりに重い。 ふと、傘を差した男性が 「どうしたの?」 と、声を掛けてきた。 排水溝に子猫がいることをマスク越しに必死に説明すると、そのお兄さんも傘を投げ捨て、一心不乱にコンクリートの蓋を持ちあげようと頑張ってくれた。 「今だ、出してあげて」 ソラは持ち上がったコンクリートの蓋から急いで、子猫を救いあげて抱きしめた。 「寒かったね、怖かったね」 ソラは子猫に声を掛けながら抱き締め、撫でた。 お兄さんはリュックからハンドタオルを出して、子猫を丁寧に拭いてくれた。 「ありがとうございました」 久しぶりに真っ直ぐに相手の目を見た。 お兄さんもソラの目を見つめ返し、 「君のおかげでこの子は命拾いしたな」 互いに微笑み合い。 家族に猫アレルギーがいるからどうしよう...と悩んでいたソラにお兄さんは、 「だったら俺が預かろうか」 そうして自転車のカゴに子猫を乗せ、お兄さんは笑顔で手を振り、ソラも手を振り返し、見送った。 ソラの説明が終わると、カイは、 「...てことは、俺とリクが恭一さんを知る前から恭一さんを知ってたのか」 「....ごめん。あ!でも、名前までは聞いていなかったし、知らなかったんだよ」 「ソラだったんだな...」 しみじみとした表情で、恭一がソラを見る。 「3人がよくうちのコンビニに来るようになって、次第に気がついたんだ、あの時の子じゃないか、て」 3人が恭一を見つめる。 「でも、次から次に同じ顔の子が来るし、正直、ゲームにでも迷い込んだ気分だったよ」 恭一は笑ったが、3人に笑顔はない。 「...それで」 リクが切り出した。 「恭一さんが好きなのはソラなんですか?」

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