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第81話
「今までのお前なら好きな人がいる、て聞いたら燃えて、奪っては飽きてお前から別れてたのにな」
リクがカイの柔らかい髪を掬いながら優しく言葉を掛けます。
「...もういいんだ。ほんと、海であったなんてこたない、1コマに過ぎない」
「本当にそれでいいのか?」
「...どういう事」
リクはベッドに投げ出されていた、カイのスマホを手に取るとカイに差し出しました。
「モヤモヤしたまんまで終わらせないでさ、はっきり終わらせたら?失恋、てカイは経験ないだろうから受け止めきれないんだろうけど」
カイに差し出された自分のスマホを目にしたままです。
その時でした。
カイのスマホがけたたましく鳴り始めます。
リクはLINEではない、電話の相手を見るなり、カイに代わり、電話に出ました。
なにやら話し始めたリク。
「わかった。うん、後で」
カイはやり取りをぼんやり眺めていましたが、
「カイ、恭一さんのバイトするコンビニ行ってきて」
「なんで」
「コーラ飲みたい。買ってきて。お前の分も買ってきていいから」
リクは2人ぶんの代金をカイに手渡しました。
「...なんだよ。パシリかよ」
カイは仕方なく、でも自身もコーラが飲みたいのは確かだったので、部屋を出るとコンビニに向かいました。
夜風が気持ちいい、夏の夜でした。
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