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第80話

「大輝!」 ふとカイはその声の主を目で辿りました。 1メートル程、離れた位置に大輝が立っており、爽やかなユニフォーム姿の長身な選手が笑顔で大輝に駆け寄り、大輝も笑顔を見せました。 リクも釣られて大輝を見るなり、 「カイの言ってたやつ...?」 カイから大輝の名前を聞いていたリクが小声でカイに尋ねます。 長身で細身、爽やかな笑顔の2人がカイにはとてもお似合いに映りました。 ふと、大輝の視線がカイに。 大輝がカイに近寄ろうと歩み始めた矢先、 「お、俺、用事あんの忘れてた」 慌てた様子でカイはグランドを走り、抜け出しました。 「なんだ?あいつ」 瞬の声に、リクはただ、真っ直ぐな瞳でカイの後ろ姿を見守るように眺めました。 カイは帰宅するなり、またしてもベッドに突っ伏します。 ソラは恭一とデートでカイは1人です。 カイの脳裏に、爽やかな大輝と同じく長身な爽やかな笑顔を大輝に見せる、2人の姿が蘇り、カイは枕に顔を埋めました。 大人びた2人はとてもお似合いで、大輝の好きな人、は彼だ、とカイは確信に変わりました。 しばらくすると、リクが静かに部屋へと入ってきました。 「...なんだよ。瞬と一緒じゃないのかよ」 リクは微かなため息を吐いて、リクがうつ伏せで寝そべるベッドの縁に腰掛けました。 「なにがあった?カイ。いつもと違うから心配した」 リクの慎重かつ優しい声に、カイはリクに全てを打ち明けました。 喜んでいた大輝とのLINEは妹の為、もらったシュークリームは妹の作った物で、大輝は妹とのキューピットで、大輝には好きな人がいると打ち明けられた事。 包み隠さず、カイはようやく、リクに全てを語りました。 そんなカイの頭をリクは優しく撫でました。 普段、強気なカイが落ち込んでいる姿をリクは初めて見たのです。

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