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第86話

ソラは抱きしめていたリクを軽く突き飛ばした。 力がないので痛みもない。 ソラは拗ねているようだった。 「話してくれれば良かったのに。ちゃんと話してくれたら僕だって納得する。僕はリクやカイが笑顔でいてくれて、幸せならそれだけでいいんだもん」 ソラが怒っているのは2人が思っていたように、恭一以外の人に心を奪われた事ではなく、自分にだけ事情を話してくれていない事だった。 「ソラ...」 2人の戸惑いを他所に、ソラは2人に柔らかく微笑んだ。 「ダブルデート...じゃないか、トリプルデート、出来たらいいね。カイの好きな人も見てたいし」 ソラの提案に、リクがカイを見た。 「で、お前は何処までやった?お前の事だからヤリまくってんだろ、どうせ」 リクが皮肉たっぷりに言うと、何故かカイは顔を真っ赤に染めた。 「そ、その...それが...キスだけ」 「キスだけ!?」 リクとソラの声がリンクした。 「お前がまだキスだけ?冗談やめろよ」 「そうだよ、嘘ついたら閻魔大王さまに舌を引っこ抜かれちゃうよ?」 カイが2人目掛けて、思いきり枕やクッションを投げた。 「お前ら、俺をなんだと思ってんだよ」 「なにって...ねえ?」 ソラがリクを見る。 「だよなあ」 「そ、その...せ、セックスは特別な時に、て大切な物だから、て大輝が...だから...」 真っ赤な顔をうつ伏せて呟くカイをリクとソラはしばらく目を丸くして見つめていたが、2人同時に吹き出した。 「カイがセックスは大切な物とか」 「凄い!大輝、て人、カイをやっとまともにしてくれたんだね!いい人」 「...まだ枕投げられたいの?」 投げる物は無くなったカイの精一杯の反論はリクもソラも痛くも痒くもない。 リク、カイ、ソラは社会人になれば嫌でも別々の道へ進む事になる。 せめて学生の間は一緒にいよう、とソラが志願している、恭一の通う大学にリクやカイも変わらず、進学する事を決意した。 リクを好きな瞬も、カイを好きな大輝もだ。 キャンパスライフは一層、楽しくなりそうだ。

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