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第1話 後宮の華
鮮やかな装飾で飾り立てられながらも、王宮のさらに奥深くにひっそりとたたずむ建物があった。それは、歴代の王を慰めてきた後宮であり、多くの陰の華たちが王の寵愛を競ってきた。
だが、現王は側室をいまだに三人しか持っていない。しかも、そのうちの一人は男。誰もがただの人質としてみていたが、唯一の男は王に寄り添い寵愛を受けていた。
◇
キン!! カンッ!!
騎士のルーファスの剣は重い。俺が受け損ねれば大けがをするとわかっていて、やつはいつも手加減をしている、と俺は舌打ちをした。その怒りに任せて剣を振り下ろす。
「ふんっ! はあっ!!!」
キィィィン!! ガラン!!
ルーファスは剣を取り落とした。
「まいった!!」
「はぁっ、はぁっ! ルーファス、手加減するなと言っているだろう?」
「しておりません。レオシュ様の剣技が鋭く素早いからです」
ルーファスが膝をついて礼をして、俺はため息をついた。
「全く口のうまい。俺の剣はすでに実戦から引いて久しい。おそらく実戦ではおまえには敵わないだろうな」
「そのような事は……それにしても、なぜいつもレオシュ様は鍛錬を欠かさないのですか?」
「いざという時に陛下の寵妃のお二人を守り、後宮のものたちも守るためだ。そのために鍛錬は必要だ。お二人の部屋とはだいぶ離れているが、走り込みもしている。お守りするくらいは出来るさ」
「陛下は、レオシュ様も庇護の対象とお考えですが……」
「それでいい。おまえも外の者にはいうな」
「はっ……」
弓の鍛錬も磨いたが、この鍛錬が無駄になることを祈ろう
この国は血を流しすぎた。ギディオン陛下は和平のために動いているが、前王がクソだったからな……おっ死んでくれたのは助かった。
会った事はないが、下手すりゃ前王の慰み者だったんだから、今の厚遇には感謝しかないぜ。
「ルーファス、例の話はどうなっている?」
女官が汗をふいてくれるが、彼女たちには聞かれてもいい。俺専属の女官だし、正直なところ会話が漏れても気にしない。
「それは……」
「話せよ。聞いているんだろう?」
「ワデムは国境の戦を止める気はないですね。と言って、奥深くまで攻め込んでくる気はないようです。しかし、その周辺の町が荒れ始めています。兵糧をその町から調達をしているので、不満が出始めていて……それが狙いだと思います」
「なるほどな。食い物がないのは辛いからな」
それは俺が一番よく分かっている——民の食い扶持を得るために俺がこの国に来たんだから。
「——話は違いますが、今夜は陛下がお渡りになるそうです」
「今夜? 俺のところに? 今夜はカサンドラ様のところのはずだが……」
「カサンドラ様の寝所には、明日行かれるそうです」
何か話したいことがあるんだろうな。
「分かった。ということだ、リリアン。用意を頼む」
「はい、万事お任せください」
予定外の王の訪問だが、皆も慣れているか。
今夜、王がこの部屋を訪うのはいい機会なのかもしれない……
上着をはおり急ぎ自室へと向かいながら、この後の手順を確認する俺だった。
◇
自室に戻り、まっすぐ浴場へ向かう。女官達も準備万端で控えている。後宮へ来て約2年たつが、後ろの洗浄だけは慣れない。だが、義務なので淡々と行う。専用の液体を何度も注入され内部を洗い清め、それから湯に入る。三人がかりで隅々まで洗われ、髪も洗い終わると全身を香油でマッサージをされる。
「レオシュ様。金のお髪が今日もお美しいですね。きっと陛下もお喜びでしょう」
「そうだといいな。なぁ、今日はちょっと趣向を凝らしたいんだ。——間に合うかな」
女官達は二つ返事で受けてくれ、それだけは自分で準備をする。いつの間にか慣れた行為だが、陛下が一度してみたいと言っていたので、今夜は主人の望みを叶えよう。
鏡の前に立ち今日の仕上がりを見ると、なかなかの出来だと思う。ダディザン人は日焼けで黒い肌をした者が多い。だが、日に当たる機会が減れば、フィディーリア人より、ほんの少し浅黒いだけだ。そのため、王に散々弄られ仕込まれた乳首が赤く膨れて目立ってしまうのは仕方がない。
香油をまぶした肌がテラテラと光り、鍛え上げた体に強い陰影を与え、肉体を強調してくれる。王は筋肉を愛でる傾向があり、俺の体をくまなく撫でるのがお好みだ。
今夜は、以前体を締め上げて筋肉の隆起が引き立つような下着を贈られていたので、それを身に付けた。はっきり言っていやらしいことこの上ない姿が鏡にうつし出されている。
本国にいた頃ならちょっとやりすぎだと思っただろうが、ストレスが多い王を楽しませるのが俺の務めだ。
そして、体内にも王の贈り物を仕込んである。これは恥ずかしくて使っていなかったが、今夜が最後かもしれない。死ぬつもりはないが、俺がやろうとしている事は命がけだ。
ローブをはおり、王の訪問を待っている。必ず主人の情けを受けるとは限らない。
だが、今夜は——
陛下が初夜以外で俺のところに通うようになるとは意外だったが、男同士の気楽さを求めているのだろうな。子も出来ないし、好きに出来る。あの方は秀でているだけにご苦労も多いのだろう。
「レオシュ様、陛下の御渡りでございます」
物思いにふけっていると、女官の知らせが入った。
「お通ししてくれ」
扉がゆっくりと開き、主人が現れる。俺は膝をついて出迎える。
「レオシュ、立つが良い」
ギディオン陛下の凜然たる美声が耳に心地よい。陛下の黒曜石の如き黒髪と、翡翠のごとく潤んだ緑色が対比して美しい。
「お待ちしておりました。何かお飲みになりますか?」
「良い。こちらに座れ」
陛下はそう言ってソファに座り、隣をポンポンとたたいた。
「はい」
大人しく隣に座ると、陛下はゴロリと横になり俺の膝の上に頭をのせた。
「女のように柔らかくはないですよ?」
「私にはちょうど良いのだ」
陛下はそう言って、俺の太腿をするりと撫でた。微妙な力加減でゾクリと甘やかな痺れが走る。
「今夜は、なぜ俺のところに?」
「なんだ? 不満か? カサンドラやヴィオラなら手放しに喜ぶぞ?」
「クックック……不満ではありません。カサンドラ様に恨まれるな、と思いましてね」
「——明日、機嫌をとっておく」
俺のことをなんと言っているのかわからないが、カサンドラとヴィオラという二人の側室は、俺が陛下に抱かれていることを疎ましく思っている。
汚らわしいと言われたこともあるが、俺が陛下に必要なくなるくらい尽くせば良いのだ、と言い返した。
——そもそも、セックスをしないで帰る夜もある。だが、相手が女なら、抱かずに帰れば揉める。そんな息抜きの場が俺の部屋だと心得ている。
執務の上に女のご機嫌とりだ。お疲れだろうよ。
陛下の黒髪をそっと撫でると、絹糸のように滑らかだ。
「おや、俺のためですか? ありがとうございます、陛下」
「おまえといると安らぐ。あの二人も臣下どもも、子が必要だと煩くて敵わん」
「子を作るのは陛下のお役目ですよ。早くしていただかないと、俺にまで火種が飛んでくるので迷惑です」
「なんだと? 口に減らないやつめ!」
「あっ?!」
軽く太ももに噛み付かれ、ピリッとした痛みが走る。だが、それは痛みだけではなく、別のものも引き出してくる。陛下がするすると足を撫で回し、甘噛みに変わると、抑えようのない声が漏れる。
「はっ……あぁ……陛下……」
「ふふっ……レオ、いやらしい声が漏れているぞ?」
「何か、御用があったのでは?」
「無粋な話はしたくない」
「ここでは良いのですよ」
そっと肩をさすり、俺は決して裏切らないと言う思いを伝える。
「……ワデムのやり口にうんざりしている。あいつらは俺が我慢できなくなって攻め込んだら、それを理由に近隣国と同盟を組んで領地を奪おうとしているのだよ」
「ですが、うわさによるとちょっかいをかけているのはワデムですよね?」
「誰に聞いた?」
「ルーファスです」
「ふん! またルーファスか」
「一番身近にいる護衛騎士ですからね」
「——ワデムはな、トエラン近郊の肥沃な土地が欲しいのだ。前王がワデムに嫌がらせをして穀物の輸出をしなかった……その仕返しに、町を疲弊させる魂胆だ。手に入れば、なおいいだろう」
前王は戦いを愛していて、わざわざ最前線に出ると言う愚行を何度も繰り返していた、と風のうわさで聞いた。正反対の土地にあるダディザンには、遠い国の話に聞こえたものだ。
「和平を結んだのでは?」
「休戦協定だ。小競り合いはいまだにある。トエランを渡せば引く、の一点張りだ! ゴーデスめ!! まだ私が憎いとみえる。好きで王になった訳ではない……!!」
「陛下……ゴーデスがいなくなれば良いのですか?」
「——そうだな。だが、あやつは強い。暗殺のような真似は、よりワデムを奮い立たせてしまう。一騎打ちで倒そうと何人も挑んだらしいが、ことごとく討ち果たされているそうだ」
「一騎打ち……確かに、最強の武人を倒せば敵兵の心は砕けますね」
「ああ、つまらぬ話をして気分が悪い! そなたが聞くからだ!!」
「っ痛!!」
今度は思い切り腿に噛み付かれ、思わず悲鳴を上げてしまった。
「陛下のご機嫌を損ねたお詫びをいたします。お情けをくださいますか?」
「良いだろう」
ベッドへ移動し、俺は陛下の正面に立つ。ローブの紐を解きストンと落とすと、陛下の瞳がギラギラとした光を宿す。俺が着ているのは、ほとんど紐で何も隠せないような衣装だった。しかも、陰茎を締め付け強調するかのようないやらしいものだった。脱がなくても、すべてが曝け出されている。
「陛下に賜った衣装です。いかがですか?」
「——よく似合っている」
差し伸べられた手が、体を紐状に這う革紐に触れる。ギリギリ素肌に触れてくれないもどかしさに、体が熱く滾り始める。
「陛下、お願いがございます」
「珍しいな、なんだ?」
「今夜は——俺だけをみてください。他の誰のことも思い出さないで、ただ、俺を愛してほしいのです。ご存じの通り頑丈な体です。陛下の全てをぶつけてくださいませんか?」
(いっそ乱暴に抱いて、鬱憤を晴らしてほしい。俺に出来るのは、この体で憂さ晴らしをしてもらうだけだから)
「——良いとも。覚悟はできているのだな?」
「はい。ご奉仕させていただいても?」
「ああ、してくれ」
平坦な口調の中に、明らかな情欲が垣間見えて、俺の心は喜びで沸き立った。いそいそと陛下のローブを脱がすと、細いがしっかりとした彫刻のような体がランプのあかりに照らされる。
(陛下。愛しております。決して言葉にしてはいけないけれど、王としてではなく、一人の男として陛下をお慕いしています。あなたのためならば、なんでもして見せましょう)
ゆったりとベッドに横たわった陛下の上に覆いかぶさると、既に屹立は硬く立ち上がっていた。
(俺でこうなってもらえるのは嬉しい……どう考えても、女の柔らかさには敵わないのだから)
愛おしい屹立の先端を舌で舐ると、しょっぱい味が口内に広がる。その味に刺激を受けて溢れる唾液の滑りを借りて奥深くまで頬張る。
「っく……ふぅ……」
ああ、感じてくださっている。
舌で裏筋を舐め上げながら、ジュポジュポと上下に動かすとピクンと体が震え、くぐもった声が漏れる。
「んっ、ふぅ、んぷっ、はぁっ、ちゅっ……ああ、陛下、美味しゅうございます……」
トロトロと溢れる先走りを舐め、喉奥まで陛下を迎え、精一杯のご奉仕をする。
ぬぽっ……くちゅっ、ちゅぱっ……
口の中で脈打つ陛下のペニスが質量を増し、上下にしゃぶると陛下の体がビクビクと震えた。
「もう良いっ! 早く、そなたの中に……」
「はい。お心のままに。陛下、こちらにも陛下に下賜されたプレゼントを仕込んでおります。ご覧いただけますか?」
「ああ。そなたのいやらしい蕾を慰める逸物を贈ったな……どれだ?」
「その目でご確認を」
俺は四つばいになって、陛下のまえで尻を高く掲げた。恥ずかしいが、よくこいう格好を望まれるからだ。
「ふふふ……これは良い格好だ。そなたの尻は、全く芸術品だ」
膝立ちになった陛下が、俺の尻を撫であげ揉みながら、恥ずかしい場所を両手で開いた。
「この水晶のリングは……あれか。良いものを選んだな。みだらにもだえる様を見たかったのだ」
「はい……ど、どうぞ、陛下のお手で、抜いてください……」
陛下の一物に似せた張り型を賜ったことがある。しばらくお渡りがない時はそれで一人で慰めていた。だが、これは趣向が違う。
くんっ!と引っ張られる感覚がして、体内からずるずると引き抜かれていく。排泄感に似たものと、中をこすられる快感とがない混ぜになって俺を襲う。
「はぁぁ……あぅ……ん、あっ!」
「くくっ! ようやく一つ目が出たぞ? まるで卵を生んでいるようだな」
陛下が俺に贈ったもの。それは宝玉をいくつもつなげてあり、体内に仕込む淫具だった。全部で5つある玉は、仕込むだけでも俺の体を抉り、陛下の太いものをほっして一度射精をするほど強烈な快感を与えていた。座っている時も俺の中をグリグリと抉り続けていたそれを、早く抜いてほしい……
「あっ、はぁ! 陛下、お願いです、一気に……」
「ダメだ。それでは楽しくない」
「そんな……」
(早く、陛下の太く逞しいモノで串刺しにされたいのに)
ぐぷっ、ぬちゅっ、ぬぽっ……香油も仕込んでいるそこから、いやらしい音とともに玉が引き抜かれていく。
「レオ……これは嫌がっていたはずだ。なぜ、自分から使う気になった?」
「あっ……はぁっ……これ、は、お好みに、合いませんでしたか?」
「とんでもない。良い眺めだ。そなたの屈強な体から、いやらしい玉が湯気をたてて生まれてくる様は淫猥なことこの上ない。良い物を贈ったと思っているとも」
「陛下が、お疲れらしいと聞いたので……」
「そうか。慰めのために恥ずかしい道具をあえて使ってくれたのか? 愛いやつだ」
「あああ〜〜っ?!」
ずぽずぽと残りの二つを一気に引き抜かれ、衝撃に耐えられずに達してしまった。
「お、お許しを……」
「私より先にイくとは、はしたない体だ。仕置きをせねばな!」
「ひうっ〜〜!!」
待ち望んだ太い陰茎の先端が埋め込まれる瞬間、わずかな痛みもあったが、それ以上に太いものが体内を擦る快感に痛みも忘れてしまう。
「っく、う! こんなにとろけて、いやらしい穴だ……はぁ、たまらないっ……! レオ!」
「あっ、へい、かっ! あっ! あっ! イイッ!」
時間をかけて解しておいたアナルはやすやすと陛下を包み込み、奥深くまで突かれても快感しか感じない。
「ドロドロで淫乱な雌め。そなた、本当は、私一人では足りないのでは? この雌穴に、ルーファスを、くわえ込んだのでは、ないか?」
「っ?! ルー? あっ! あうっ!! そ、な、ことっ!!」
ズドン! と乱暴に奥深くに突き立てられた。
お怒りなのか? ルーファスとのことを勘違いしている? 誤解だっ!
返事をしたくとも、激しい突きに喘ぎしか出てこない。
「ふぅ……」
陛下は奥に埋め込んだまま、ピタリと動きを止めた。
「へい、か、誤解、です……ただの、たんれん、で……」
「浮気をすると相手にサービスしたくなるらしい。このグズグズの雌穴に咥え込んだ後ろめたさではないのか?」
「違います……絶対に、違います……これは、支度をしていたのです……」
「真か? うそはないな?」
「はい……私は陛下だけしか、知りません……」
俺の中に入ったことがあるのは、陛下ただ一人。それだけは誇れることだ。
「そうか……おまえは私だけの雌だ。これからも、この先もだ。良いな?」
「もとよりそのつもりでございます。陛下、あなただけの雌を存分に犯してくださいませ……」
「っ! この、淫乱め!」
パシッと軽く尻を打たれる。
(ああ、もっと打ってください。陛下の名残りをこの体に与えてください)
背後から一度、正常位で一度。二度陛下の精を内部に注がれて、お互いに疲労困憊でベッドに横たわる。
「陛下……」
「レオ、少々興に乗って酷く抱いてしまったな。すまない」
「俺は陛下のものです。謝る必要はありません」
「今宵はここで寝る……」
「えっ?」
「なんだ、いやか?」
「い、いえ……」
嬉しいが、中の処理をしなければならないのだが……一晩くらいなら、大丈夫だろうか。
俺をグイッと抱き込み、陛下は胸筋に顔を埋めた。その時、乳首にも吸い付き舐め回すので、またあられもない声が出てしまう。
「ふふふ……すっかり赤く尖り、いやらしいバラ色だな。」
「陛下、女の胸とは違いますよ?」
「分かっている。ほどよく硬い手触り、力強い筋肉の張り……素晴らしい。私はこちらの方が好きだ」
「あっ……! す、吸わないで、くだ、さ、い!」
ちゅくちゅくと何度も吸いながら、舌で尖りを転がされて身悶えた。
「次は、ここだけでイけるようにしつけてやろう」
「そんな……」
ただでさえ敏感になってしまった乳首を、これ以上いやらしくされてしまう?
「だが、今夜はもう疲れた……」
「はい。おやすみください」
胸に顔を埋めたままの陛下の髪を撫でていると、いつの間にか俺も眠りについていた。
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