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第6話

とある夜。 ユウは風呂上がりに首に掛けたタオルで髪を拭いながら何気なくテレビ番組を付けていて、聞き覚えのある声に振り向いた。 深夜のしがない音楽番組。 Black Angel のライバルだった、Doubt だ。 途中から見たものの、新人のバンドとして紹介され、インタビューを受けた後、演奏が始まる。 ボーカルのナオヤの歌う姿、Doubt が出演している現実になんとも言い難い、怒りにも似た感情を覚える。 ユウは暫く見つめた後、テレビの電源を切った。 (...Black Angel はどうなったんだろう....) 二丁目でダイチは昔と変わらない少し長めの金色の髪に黒のトップス、首には見慣れたクロスのネックレス、ダメージジーンズといった出で立ちではあった。 今更、ダイチに連絡する訳にもいかない。 (それに...) ダイチは1人では無かった。 思考を振り払うようにユウは勢いよく髪の毛をタオルで拭いた。 数日後の土曜日の夜。 ユウの足は以前、よく通い、自らもステージに立っていたライブハウスにあった。 見覚えも、聞き覚えもない、ステージ上のバンドを眺めながらビールを飲んだ。 「ユウ、久しぶり」 Black Angel の前に在籍していた、バンドのベーシストのジンだった。 「3年ぶり?まではいかないか」 「それくらいじゃない?」 「Black Angel 抜けたらしいな、勿体ない」 「Black Angel まだあるの」 ユウは驚きの眼差しを向けた。 「知らないの?Doubt がメジャーデビューしてライブハウスにも出なくなったからさ、今、奴らが注目株だよ」 「お前もまだやってんの?」 「まさか!お前、うち抜けて正解だったよ、今はみんなバラバラでさ。他のバンドにいる奴もいれば社会人になってる奴もいる。俺もそう。たまの息抜きにこうして観に来てる」 「...そっか」 「でもさ、ボーカル、お前の方が俺は好きだったなあ、お前、センスあんもん」 「ビールでも奢ろうか?」 「そんなつもりで言った訳じゃねーよ」 と、ジンはせせら笑い、ステージを見つめた。

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