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第14話
スタジオ練習も売り専もない昼下がり、ダイチは楽器屋へと足を運んだ。
ユウと付き合っていた頃、よく2人で足を運んだ記憶がある。
そろそろ、新しい弦やピックを買おうと思っての事だった。
ふと見上げた先のギターに目を奪われた。
レスポール。
値段を見ると20万近い。レスポールだけではない。決して全てのギターは安い物ではない。
スタジオを借りるのもタダではない。
だが、ライブの為には防音のスタジオでみんなで合わせるのは大事な事。
スタジオは4人で割り勘ではあるが。
バンドをするには金もかかるし、生活もある。その為もあり、当時、18だったダイチは売り専を始めた。
ハタチでユウと出会う前の彼氏もウケだった。ダイチはタチだ。
夢の為、と意を決して、売り専の面接を受け、合格した。
初めての客は30代で紳士的だった。
ウケが初めてだというダイチを優しく抱いた。
初日で4人、間隔を空けず、相手し、抱かれて、感じ、高い給与を受け取るとすぐに当時の彼氏を呼んで抱いた。
楽器屋から帰宅し、何気なく、他の売り専をネットで見ていると、自分が勤務する売り専よりも給与の高い店を見つけた。
面接をこぎつけ、合格し、以前の店はテキトーに嘘をつき、辞めた。
感じのいいマスターに待機所を案内された。
数人の少年や青年の視線がダイチに注がれ、ダイチは笑顔で、ミライです、よろしく、と以前と同じ源氏名で軽く会釈した。
ふと、話しかけてきた、長身の男に見覚えがある。
彼氏のヒカルが二丁目に飲み行きたい、と駄々をこね、飲みに行った際、ユウと並んで歩いていた青年だとダイチは気がついた。
(こいつも売りやってんのか....)
ふと、視線を感じ、見下ろした先にはユウが座っていて、ダイチを見上げ、目を丸くして釘付けになっていた。
「どうして...」
マスターにこれからの事を説明やらで、ダイチは呼ばれ、待機所を後にした。
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