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第13話
ハタチのヒカルとはユウと別れて間もなく出会い系サイトで知り合った。
売り専を始めてからダイチは彼氏を切らした事はない。
18から売りをやり、男に抱かれる日々で自分をウケにしない予防線だ。
「すごーい!」
ライブスタジオの一部屋で練習中、ヒカルが拍手する。
正直、ライブはまだいいのだが、スタジオ練習にまで着いてくるヒカルはダイチも、他のメンバーにとっても邪魔だった。
けれど、ヒカルはバーの店員をしているだけあり、愛機があり、顔も広く、ライブ前にかなりチケットを売り捌く。
無下には出来ない存在だった。
ダイチはヒカルとは彼氏ではなく、ヒカルの勤務するカジュアルなバーで知り合った友人、とメンバーには伝えている。
今更、カミングアウトするのも面倒な上、しかも嫌いではないが特別、好きともいえない。
半年近く一緒にいればヒカルが悪い子ではないのはダイチは充分わかっている。
ユウが脱退し、しばらく Black Angel は活動してはいなかった。
Doubt がメジャーデビューするとの噂を嗅ぎつけたメンバーがダイチに新たなボーカルを入れて再始動するべきだ、とダイチに責めよった。
Doubt がメジャーに行けば、Doubt と僅差の人気だった Black Angel がライブハウスで注目を浴びるのは間違いないとメンバー達は踏んだのだ。
ライブハウスの入り口の壁に手書きのボーカル募集の紙を貼るダイチの心境は複雑だった。
この紙を見て、ユウはダイチたちのメンバーの一員となり、面接で出会ったユウとダイチは恋に落ちた。
今までなんとなく付き合っていた彼氏たちとはなにかが違う、ダイチはそう感じ取った。
歌唱力を知る為、マイクを前に歌い始めたユウの歌声に拍子を抜いた。
話すと小声で頼りない声だが迫力のある歌声に圧倒された。
数人、面接していたが、ユウを結婚が理由で辞めた昔のボーカルの後釜にし、Black Angel は新たなスタートを切った。
ユウは絶対音感の持ち主で作曲の才能もあり、2人で作曲も手掛けるようになった。
ユウが辞め、面接で決めた新たなボーカル、ショウの歌声も悪くはない。
だが、ダイチにとってもメンバーにとっても、ユウと比較すると物足りなさを感じていた。
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