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第55話「ハルとユキのプレイ」

「汚ねえ手でハルに触ってんじゃねえぞクソッタレがあ!!」 「ユキ、やめろ!!」 千切れそうな程に掴まれ引かれる弘也のTシャツ。 かけられていた体重が身体の上から退くと、晴也は瞬時に立ち上がり弘也を引きずりながら廊下に出て行った智幸を追いかけた。 「ユキ!!」 今度は廊下に転げている弘也の上に智幸が馬乗りし、右手を引いて殴りかかっている。 「ユキ、ストップ!!お前は殴っちゃダメだ!!」 晴也は慌てて声を荒げて智幸に叫んだが、頭に血が上り切った彼が止まる筈もなく、鬼の形相で弘也を睨みつけて拳を振るった。 「殺す!!殺す殺す殺す殺す殺す!!」 「誰だよお前!!やめ、この!!」 智幸は帰ってきて直ぐに目に飛び込んできた光景に絶望して、怒りが湧き上がっていた。 よりによって誰かも知らない男が晴也に触れていたのだ。 彼からしてみればこの世の何よりも許せない行為だった。 「テメェこそどこのどいつだ!!この家に上がるな!!お前の方がモブキャラなんだよクソが!!殺してやる、俺のハルに触りやがって!!」 「晴也はお前のもんじゃねえ!!」 揉み合いが始まり、とうとう智幸が弘也の左頬をぶん殴り、弘也は智幸を蹴飛ばし始める。 やたらと身体の大きい2人がドタバタと乱闘を始めてしまったのだ。 (まずい、壁に穴が空く!!) 晴也は咄嗟に上に乗っている智幸の肩を掴み、思い切り自分の右側を通して後ろにぶん投げた。 「ッ、あ"!?」 倒れ込んだのも束の間で、智幸はすぐに起き上がり晴也を見上げる。 「ハル、!」 「そこ、座れ、ユキ」 「あ、、、」 珍しくブチギレている晴也を前にして、智幸は唾を飲んでその場に正座をした。 彼は生まれてこの方、誰よりも多くこの顔を拝んでいる。 本気で怒っているときの、静かに瞳孔を開いて無表情を浮かべる晴也をだ。 「弘也、お前もそこに座れ」 「晴也、俺は、!」 「座れ」 いつもニコニコしている人間が怒るときは大体怖いが、晴也は別格だった。 上がるにしろ下がるにしろ、感情の起伏をほとんど見せない男が余計な事は口に出さずただただ弘也を見つめながら右手の人差し指で床を指している。 「ユキ」 「、、はい」 「うちに来て喧嘩して何回もお母さん達に怒られてるよね?覚えてる?」 「覚えてる、、ごめんなさい」 小学生のときの話しだが、彼らにとっては鮮明な記憶だった。 この家でも智幸が晴也の見た目をバカにする度に喧嘩が起き、暴れ回って何度か壁に穴を開けた。それをどちらが開けたにせよ、毎回2人して怒られてきた。 それぞれ正座している図体の大きい男の間に立った晴也は、まず智幸の方を向いて説教を始めた。 「あとさっきの見てた?俺が止めてたし俺が殴れば済む話しだったよ?何でしゃしゃり出てくるの?ユキは俺より弱いよね?忘れた?」 忘れる訳がない。 何度も口に砂を詰められ、何度も殴り潰され、何度も何度も泣かされて来たのだ。 普段見せないキレた後の手のつけられない人並外れた馬鹿力に勝てた事など、智幸と晴也の喧嘩で一度だってなかった。 「ごめんなさい、、」 「ん。次、弘也」 ぐるん、と後ろを向くと、俯く弘也に上からドサドサと説教を落として行く。 「まず力任せに人を押し倒すな。相手がお前より弱い人だったら強姦になる。勝手にキスしようとするな。気持ち悪い。チャンスがあるならとか言ってたけど、お前にチャンスなんかない」 「え、」 思わずバッと弘也が彼を見上げた。 あの恐ろしいキレ散らかした瞳孔の開いた目ではない。 晴也は冷静で、穏やかな顔をしていた。 「男だからとか女だからとかじゃないよ。俺は、ユキだから付き合ってんの」 サラリとひと言そう言った彼の後ろで、顔を真っ赤にした智幸が晴也の背中を見上げている。 「ユキ以外の男も女も無理。昔からそう。だから、お前のことは好きになれないしならない。悪いんだけど帰ってくれ。友達やめる気はないけど、やめたいならもう連絡してこないで。俺を諦めないって言うなら、お前とはもう連めない」 「そ、そんな、、」 「俺のこと1番好きなのはユキだし、俺が1番好きなのもユキだよ。入る隙なんかない」 再び弘也は俯いて、正座した膝の上に置いている両手の拳を痛い程握りしめる。 「、、か、考えさせて」 それだけ言うと立ち上がり、そそくさと靴を履いてドアを開け、一瞬振り返って2人を見つめてから弘也は出て行ってしまった。 「、、はーーー。何だったんだ、アイツ」 やたらと疲れた晴也は、うなじをかきながら玄関のドアまで歩いて行き、鍵を閉めて振り返った。 「は、ハル、あの、」 智幸は未だに真っ赤な顔のままだった。 「なに」 穏やかな声に戻った晴也は閉め終わった鍵をチラリと確認してから廊下に戻り、ト、ト、と歩いて智幸のそばまで行くと、目の前にしゃがんだ。 智幸の泣きそうな視線と、晴也の穏やかな視線が絡み合う。 「あ、、あの、あ、そうだ、ちゃんと別れてきたよ」 「あ、そうなんだ。良かった」 「俺の気持ちも、向こうの気持ちもちゃんと聞いて、話して、謝って、終わらせて来た」 「うん、えらい」 ふわ、と晴也が優しく笑うと、智幸は思わずその顔に手を伸ばし、頬を包んでうっとりしながら見つめる。 「ハル、綺麗だ」 毎回毎回、彼は晴也を崇めるように見つめて、壊さないように触れている。 晴也にはそれが少しくすぐったく、はにかんだように笑って智幸を抱きしめた。 「馬鹿だなあ」 「うん、、ねえ、もう全部ハルのものだよ。やっと、」 「ずっとそうだったろ」 「うん、そうだね。俺はずっとハルのものだ」 智幸の腕が背中に回る。 優しく回せたな、と褒めるように頭を撫でると、首筋に顔を埋めて来た。 「ハル、ちゅー、されなかったよね?」 「未遂。されてないよ」 「本当に?」 埋めていた頭を起こし、智幸は鼻先の触れる距離で愛しそうに晴也の唇を見つめ、右手の指でそこをなぞる。 ふに、と柔らかい感触にうっとりした。 「ん、、嘘かも」 誘うような言葉に、ゾワ、と背筋に悪寒にも似た快感が走った。 「嘘?キスされたの?俺のものなのに、ハルは俺のものだよ」 「そうだっけ?分かんなくなった」 「何でいじめるの。ねえ、キス、してないよね?」 べろ、と厚みのある舌が晴也の閉じた唇の表面を舐め上げていく。 「しちゃったかも、」 「やめてよ、ハル。ハルは誰のなの?ねえ、」 「っん、ふっ」 強引に重なった唇。 隙間から舌を口内にねじ込まれ、じゅる、と唾液を吸い上げられる。 「んぅ、ん、ん、」 「ん、ハル?ハル、好きだよ、ハル」 「んっ、、はあ、んっ、ふ、ぅ、んっ」 差し出した舌先にしゃぶりつかれて吸われると、晴也の肩が跳ねた。 馬鹿みたいな遊びをしながらも、2人は2人だけのその世界に酔って、ずぶずぶとはまり込んでいく。 「ハル?好きだよ?ハルは?俺のものだよね?キスしてないよね?ねえ、嫌だよ、ハルが他のやつとキスするのなんて許せない、絶対嫌だ」 「んふ、んっ、ユキ、んっ、ぅキっん、」 智幸からの息をさせない噛み付くようなキスに頭の先が痺れ始め、晴也はとろんととろけた顔で時折りうっすら目を開けては、苦しそうに必死にキスを繰り返す彼を眺めた。 (可愛い) 冗談と分かっていても、晴也が他の男とのキスを匂わせるのが気に食わない智幸は、晴也を傷付けないように、それでも激しく苦しくなるように舌を舐って口を塞ぎ、右手を彼の着ているTシャツの上を滑らせてピンと立ったそれを見つけると、ギュッと摘んだ。 「ぁあっ!」 晴也の腰が跳ね、キスを嫌がった。 右手で智幸の胸を押し、自分から離そうとしている。 「何で嫌がるの、キスして。ハル、ハル」 「ぁんっ!んっ、乳首だめ、ユキ、!」 「触らせたの?あいつにもここ、こんな風にされた?」 カリカリと甘く引っ掻かれ、それが終わると先端に指先をくっつけ、ぐりぐりとこね回し始める。 「ぅあ、あっ、触らせてないっ、ちゅーもしてないよっユキだけだから、んあっ」 「本当?本当に?ハル、不安になっちゃったよ、俺」 「んむっ、ンッ、ユキ、んっ」 キスもやめない。 乳首をいじるのもやめない。 晴也が弱音を吐くまで、自分を求めるまで、その微々たる快感を焦らすように与え続けた。 「はあ、はあ、はあ、ゆ、ユキ、んんっ」 「ハル、怖い、ハルはどこにも行かないよね?俺のだよね?」 不安でも何でもないくせに。 ぴんっぴんっと胸をはじかれる度に、「あっ」 「んやっ」と晴也の甘く切ない声が廊下に響く。 勃起し始めたそれがむず痒くて、彼はぺたんと床に座り、内腿を擦り合わせた。 「ユキ、んふ、ユキ、あっ」 「ハル、ハル」 「ユキ、も、おいで」 耐えられなくなった晴也がそう言いながらTシャツを捲り上げ、ぷっくりと膨れた乳首を智幸の目にうつす。 「あの男にもそんなえっちなことしたの?」 「してないよ。ユキだけだよ」 智幸に手を伸ばし、頭を撫でてから頸に手のひらを這わせる。 尻を上げ、廊下に膝立ちをした晴也は、智幸を引き寄せながら自分の胸元を彼に近づけていく。 「ユキは赤ちゃんなんだから、おっぱいあげなきゃ泣くだろ」 扇情的に揺れる、怪しい光を秘めた緑色の瞳が美しい。 智幸がはあっ、と熱っぽい息を吐き出した。 「おいで、おっぱいの時間だよ」 その言葉に、ブア、と智幸が全身に汗をかき、苦しくなる程彼に欲情し始める。 「お、おっぱい、ちゅーちゅーしていいの、?」 フー、フー、と興奮し切って荒く呼吸をする智幸が、股間を膨らませながら彼に詰め寄っていく。 真っ赤な顔と細められた目は泣きそうで、グズる赤ん坊のようだった。 「ちゅーちゅーしていいよ、ユキ」 「ッ!」 舌舐めずりしながら優しく言う晴也を相手に、もう理性と言うものは全部吹き飛んだ。 自然と始まってしまった赤ちゃんプレイに動じることなく、2人してそれが自分達に1番似合うような気がして肌に触れ合う。 「ハルのおっぱい、ん、ん、ハル、ハル!」 「あは、んっ、ユキ?おっぱい飲んでるの?」 「飲んでる、ハルのいやらしいおっぱい、吸わされてる」 「んアッ、それ、んっ!、舌でくにくにするの、んふっ、気持ちいい」 「ハル、撫でて、ハル」 言われた通りに頭を撫でて、乳首を吸い続ける智幸を見下ろす。 乳首から全身に甘ったるい電流が流れ、晴也の性器は痛みが出るくらい勃起していた。 「ユキ、部屋、行こっか?」 その誘い文句に、智幸は真っ赤な顔でコクコクと頷いた。

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